1、はじめに
冬にも屋根からの雨漏りが多く発生していることをご存じでしょうか? 積雪が多いこの時期には、屋根に積もった雪が日中の太陽で溶け、軒先で凍った雪が氷柱になります。 これが繰り返されることで、屋根の上がダムのような状態となり、屋根の上で水が溜まるため雨漏りが発生します。 またエアコンやストーブをつけるため、外気との温暖差によって結露が発生し、雨漏りのような被害が発生することもあります。 雨漏りは放置せずに、すぐに対処することが必要です。
実は、屋根工事には様々な種類があります。 今回は、屋根工事の種類とその工事が最適になる状況・工事費用等をご説明します。 それぞれの屋根工事で、直せる症状・工程・工期・費用相場も異なるので、屋根を直す前にどの屋根工事があなたのお家の屋根工事に当てはまるのか確認しておきましょう。
2、屋根工事の種類と費用相場
屋根工事は全部で8種類あります。 8種類のうち、屋根全体を直す工事が「葺き替え」「葺き直し」「カバー工法」「塗装」の4種類、屋根の一部を直す工事が「屋根材の修繕」「棟板金の交換」「漆喰補修」「雨樋修理・交換」の4種類です。 工事種類は、劣化箇所・範囲・屋根材の種類等によって最適なものが決まります。
3、屋根工事の種類 ①葺き替え
■ 葺き替え工事とは?
葺き替えとは、屋根の全交換工事のことです。 表面の屋根材をすべて撤去した後、屋根の下地である防水シート(ルーフィング)と下地木材(野地板)を交換・補修し、新しい屋根材を葺きます。 屋根工事としては、最も大規模な作業となり、屋根のトラブルや経年劣化を全体的・根本的に解消します。
■ なぜ葺き替えが必要なのか?
屋根材や屋根の下地には寿命があるからです。 屋根材は種類により20~40年、内側の防水シートや下地の木材は約30年で寿命を迎え、雨に対する防水性が失われます。 そのまま住み続けると、家の骨組みや基礎部分が腐食してしまうため、葺き替えをして防水性を回復する必要があります。
■ 葺き替えのメリット・デメリット
〇 メリット
・ トラブルを根本から解決できる ・ 表面の屋根材だけでなく、下地も新しくなる ・ 屋根材を変えられる
✕ デメリット
・ 費用が高い ・ 工事期間が屋根工事の中で最も長い ・ アスベストを含む場合、追加の費用が発生する
【葺き替え工事】
工事内容 :古い屋根材と下地を新しいものに交換 費用相場 :(30坪の場合)140~200万円 工期 :10~15日間 工事時期の目安:築30~40年目 工事可能な屋根:スレート屋根、金属屋根、瓦屋根 特徴・注意点 :最も大規模・高額な工事
4、屋根の工事の種類 ②葺き直し
■ 葺き直し工事とは?
葺き直しとは、瓦屋根だけで可能な下地の全体補修・交換工事のことです。 表面の瓦を一度取り外した後、屋根の下地である防水シート(ルーフィング)と下地木材(野地板)を交換・補修し、元の瓦を敷き直します。 日本瓦は、取り外した後の再利用が可能です。 そのため、下地だけを直して瓦は同じものを敷き直すという工事が可能なのです。 新しい瓦の購入費用の節約にもなります。 一度はがすと再利用できないスレートやガルバニウム銅板、トタン等を使った屋根では葺き直し工事はできません。
■ なぜ葺き直しが必要なのか?
耐久年数が長い瓦屋根と言えども、屋根の下地には寿命があるからです。 日本瓦は50~60年以上もつ素材ですが、瓦の下の防水シートや下地の土・木材は約30年で寿命を迎え、雨に対する防水性が失われます。 そのまま住み続けると、家の骨組みや基礎部分が腐食してしまうため、葺き直しをして下地の防水性を回復する必要があります。
■ 葺き直しのメリット・デメリット
〇 メリット
・ 新しい瓦の購入費用、処分費用がかからない
✕ デメリット
・ 屋根材が日本瓦である必要がある(スレートや金属屋根等は不可)
【葺き直し】
工事内容 :屋根下地を新しくした後、元の瓦を敷き直す 費用相場 :(30坪の場合):70~100万円 工期 :7~10日間 工事時期の目安:築30~40年目 工事可能な屋根:瓦屋根 特徴・注意点 :工事可能なのは瓦屋根のみ
5、屋根工事の種類 ③カバー工法
■ 屋根のカバー工法とは?
カバー工法とは、今の屋根の上から新しい屋根を重ねて建てる工事のことです。 葺き替えとは目的や効果は同じですが、既存の屋根の撤去作業がない分、工事の材料費や費用・工事時間が節約できます。
■ カバー工法のメリット・デメリット
〇 メリット
・ 葺き替えに比べて安価で、工期も短い ・ 遮熱性や断熱性が上がる ・ アスベストの撤去費用が不要
✕ デメリット
・ 元からある部分の異常や劣化は直らない ・ 屋根の重量増加により耐震性が下がる ・ 使用できる屋根材がほぼ金属のみ ・ その後の屋根費用が高くなる
【カバー工法】
工事内容 :古い屋根の上に新しい下地と屋根材をかぶせる 費用相場 :(30坪の場合):80~120万円 工期 :5~10日間 工事時期の目安:築30年目(葺き替えが可能であれば葺き替え工事の方が好ましい) 工事可能な屋根:スレート屋根、金属屋根 特徴・注意点 :費用が安い。古い屋根が傷んでいると工事が無駄になってしまう
6,屋根工事の種類 ④塗装(塗り替え)
■ 屋根の塗装工事とは?
屋根の塗装工事とは、屋根材に新しい塗料を重ね塗りする工事のことです。 同じ色で塗り直すだけでなく、違う色を選ぶことで家のイメージチェンジもできます。
■ なぜ塗装が必要なのか?
主に屋根の見栄えの回復のためです。 実は塗装工事には屋根全体の寿命をのばす効果や、防水性を回復させる効果はあまりありません。 塗装により屋根材が再コーティングされることで、屋根材そのものの寿命はのびます。 しかし、塗装では内部の下地の寿命はのばせません。 下地が寿命を迎えた場合は、屋根材の寿命が残っていても、葺き替えや葺き直しで防水性を回復させる必要があります。
■ 塗装のメリット・デメリット
〇 メリット
・ 屋根の美観が回復する ・ 屋根のイメージチェンジができる ・ 屋根材の寿命がのびる
✕ デメリット
・ 屋根下地の寿命はのびない ・ 「縁切り(塗料乾燥後に塞がった隙間の塗膜を切って、水の通り道を確保する工程)」を忘れると逆に雨漏りが増える
【屋根塗装】
工事内容 :屋根の表面を塗り替える 費用相場 :(30坪の場合)40~80万円 工期 :10~15日間 工事時期の目安:築15~20年目 工事可能な屋根:スレート屋根、金属屋根 特徴・注意点 :瓦屋根は塗装
7、屋根工事の種類 ⑤屋根材の修繕
■ 屋根材の修繕工事とは?
屋根材の修繕とは、屋根表面の瓦・スレート・ガルバニウム銅板・トタンなどを部分的に修繕・交換する工事のことです。 工事の費用相場は、修繕範囲が約1畳分の場合、瓦屋根の場合は2~4万円、スレート屋根と金属屋根の場合は1万5000円~3万円が目安です。 作業に足場が必要な場合は、さらに20万円ほどかかります。 足場は、修理箇所がハシゴでは届かない高所で、ベランダやバルコニー等からも登れない屋根の場合に必要になります。
■ なぜ屋根材の修繕が必要なのか?
家本来の寿命を縮めないためです。 屋根材は、経年劣化以外にも強風や飛来物等の理由で物理的に壊れることがあります。 損傷を放置しておくと、そこから雨水が入り、家の内部が寿命よりが早く腐ってしまうので、早めに修繕する必要があります。
■ 屋根材の修繕のメリット・デメリット
〇 メリット
・ 壊れた部分だけ直すので経済的
✕ デメリット
・ 直した箇所の色合いが周囲から浮くことも
【屋根材の修繕】
工事内容 :破損した部分の修理・交換 費用相場 :(30坪の場合)3~30万円 工期 :1~3日間 工事時期の目安:異常を発見次第 工事可能な屋根:スレート屋根、金属屋根、瓦屋根 特徴・注意点 :高所だと足場が必要(約20万円)
8、屋根工事の種類 ⑥棟板金の交換
■ 棟板金の交換工事とは?
棟板金の交換とは、屋根の頂上にある金属製のフタを交換する工事のことです。 工事の対象になるのは、スレート屋根もしくは金属屋根です。 瓦屋根は、棟が板金製ではないため不要です。 代わりに棟の土台と棟瓦の解体と再設置をする「棟の取り直し」を行う必要があります。
■ なぜ棟板金の交換が必要なのか?
屋根の中で棟板金だけ寿命のサイクルが早い部分だからです。 屋根の頂上である棟部分は、日射や風雨による影響が強く、屋根材部分の約2倍早く寿命が訪れます(スレート屋根でも棟だけは金属板金になっている理由です)。 築15年を過ぎたあたりで、棟の下地木材が雨で柔らかくなり、釘が緩まって棟板金が飛んでいってしまうリスクが高まってきます。
■ 棟板金の交換のメリット・デメリット
〇 メリット
・ 劣化した部分だけを直すので経済的
✕ デメリット
・ 下地木材の交換を忘れると工事の意味がない
【棟板金の交換】
工事内容 :外れやすくなった屋根棟の改修 費用相場 :(30坪の場合)10~30万円 工期 :2~4日間 工事時期の目安:築15~20年目 工事可能な屋根:スレート屋根、金属屋根、瓦屋根の場合は「棟の取り直し」 特徴・注意点 :棟下地の木材も必ず交換する
9、屋根工事の種類 ⑦漆喰交換
■ 屋根の漆喰交換工事とは?
漆喰とは、瓦屋根の棟と下地を固定している白い粘土状の接着剤です。 漆喰交換とは、古くなった漆喰を一度はがし、新しいものに塗り替える工事のことです。
■ なぜ棟板金の交換が必要なのか?
漆喰は年月の経過とともにはがれてくるからです。 はがれた部分を放置しておくと、屋根内部に雨水が入り込んで腐食や雨漏りにつながるので、漆喰交換が必要になります。
■ 漆喰交換のメリット・デメリット
〇 メリット
・ 劣化部分だけを直すので経済的
✕ デメリット
・ 土台の強度が上がるわけではない ・ 交換ではなく、重ね塗りだと雨漏りの原因になる
【漆喰交換】
工事内容 :瓦屋根側の白い接着剤の塗り直し 費用相場 :(30坪の場合)10~25万円 工期 :2~4日間 工事時期の目安:築15~20年目 工事可能な屋根:瓦屋根 特徴・注意点 :重ね塗りではなく、はがして交換すること
10、屋根工事の種類 ⑧雨樋修理・交換
■ 雨樋修理・交換工事とは?
雨樋修理・交換とは、雨樋の詰まりを掃除したり、壊れた雨樋や固定金具を交換したり、塗料を塗り替えたりする工事のことです。
■ なぜ雨樋修理・交換が必要なのか?
雨樋が壊れたままだと、家の寿命を縮めるからです。 雨樋は、屋根に降った雨が外壁に伝わらないようにする設備です。 壊れた雨樋を放っておくと、水が窓枠から屋内に入ってきたり、外壁の痛みが早くなってしまうため、修理や交換が必要です。
■ 漆喰交換のメリット・デメリット
〇 メリット
・ 劣化部分だけを直すので経済的
✕ デメリット
・ 修理部分の色が周囲から浮く可能性
・ 低所のそうじであればDIYでも可能
【雨樋修理・交換】
工事内容 :壊れたり詰まったりした雨樋の回復 費用相場 :(30坪の場合)3~30万円 工期 :1~4日間 工事時期の目安:築10~20年目 工事可能な屋根:スレート屋根、金属屋根、瓦屋根 特徴・注意点 :詰まりの掃除なら3万円、全交換なら30万円
11、まとめ
雨水・ちり・ホコリ・風等、自然環境から受けるダメージから家を守ってくれているのが屋根です。 その屋根の劣化や損傷があれば、外からのダメージが建物内へと伝わり、内部から劣化することで長く住めない家になってしまいます。 屋根を直すということは、家へのダメージを最小限に抑えることができ、長く安心住める家へと変えてくれる効果があります。
雨漏りや屋根材のトラブル等、「見えない部分に何が起こっているけど、原因がわからない」のは不安だけが増えてしまいます。 修理方法や費用も大切ですが、実際にお家の屋根の状況を専門業者に点検してもらいことも重要です。 弊社は外壁工事だけでなく、屋根工事も承っております。 点検・見積もりは無料ですので、お気軽にお問い合わせください。