1、はじめに
外壁塗装で劣化している部分のみ補修可能なケースがあることをご存じでしょうか? 外壁全体に塗装を行うとそれなりの費用がかかってしまいますが、劣化箇所のみ部分的に補修を行うことで費用を大幅に抑えらることができます。 しかし、劣化状況によっては部分補修だけでは症状を改善できないこともあるので、注意が必要です。 今回は外壁塗装を部分的に補修する場合の種類や補修方法、注意点などをご説明します。
2、部分補修の方法と費用について
外壁の部分補修は、劣化状況や劣化の種類から補修方法を検討する必要があります。 症状に合わせた補修を行わないと、すぐに同じ劣化が再発してしまうことにも繋がります。 部分補修には様々な種類や補修方法があり、補修にかかる費用も異なります。 ここでは劣化の種類別に必要な補修方法と費用の目安を解説していきます。
① ひび割れ
【補修方法】
サイディングやモルタル外壁にひび割れの症状がある場合には、コーキングによる部分補修が一般的です。 ひび割れは、その幅や深さによって傷みの程度を測ることができます。 幅が0.3㎜以下のひび割れは「ヘアクラック」と言われています。 表面の塗膜ばどにできるひび割れで、構造上の問題にはつながりません。 幅が1㎜以上のひび割れは「構造クラック」と言われ、すぐにでも補修が必要な状態です。 補修方法は主にコーキングもしくはエポキシ樹脂の充填によって対応します。 建物の構造体やひび割れの程度によっては、U字カットや左官処理が必要になるケースもあります。
【補修費用】
構造クラックのひび割れ補修の費用の目安は、3,000円/m前後です。 クラックのコーキングによる補修費用の他にも、補修跡を目立たせなくさせるためには周囲の塗装に合わせた塗装費用が必要になります。 美観目的に行う部分補修の費用の目安は、2,000~4,500円/㎡前後です。
② コーキング材の剥離
【補修方法】
コーキング材は弾力のあるゴムのような素材ですが、経年劣化によって硬化しひび割れが発生します。 さらに劣化が進んでしまうと剥離(剥がれ)に繋がります。 コーキングの剥離が部分的に発生している場合は、コーキングの打ち増しや打ち替えで対応することができます。 しかし、使用するコーキングの種類には注意が必要です。 部分補修で塗装まで行う場合には、塗料を塗ることができるウレタンや変性シリコン系のコーキングを使用する必要があります。
【補修する費用】
コーキングの劣化状況やひび割れ程度であれば、打ち増しで部分補修を行うことができます。 既存のコーキングの撤去を行わない打ち増しの費用の目安は700円/m前後です。 コーキングの剥離が発生しており、既存のコーキングを完全に撤去してから打ち直しを行う場合の費用の目安は1,000円/m前後です。
③ サイディングの浮き
【補修方法】
多くの住宅で採用されているサイディングは、経年劣化によって浮きや反りが発生することがあります。 部分的に浮きが見られる場合には、釘やビスを使った固定が補修方法として一般的です。 しかし、反りが激しいサイディングの場合にはビスで固定することで割れてしまうことがあるので注意が必要です。
【補修費用】
サイディングの浮きに対する釘やビスでの補修費用の目安は1~2万円前後です。 釘やビス補修で対応できない場合は、サイディングの交換が必要となります。 部分的なサイディングの交換にかかる費用は2~3万円前後です。 釘やビス補修で対応できない場合は、既存のサイディングの撤去費、新しいサイディングの設置費用など様々な費用が必要になります。
④ 鉄部のサビ、腐食
【補修方法】
鉄部のサビや腐食による劣化の場合には、部分補修としてサビの撤去などの下地調整後にサビ止め、中塗り、上塗りの順番に塗装を行います。 また、腐食による穴あきの場合は防水テープで補修や部分的な張り替えが必要になります。
【補修費用】
鉄部のサビの撤去、下塗りから上塗りまでの塗装にかかる費用相場は2,000~3,000円㎡前後です。 サビによる穴あき部分の張り替えには、1カ所あたり5,000~10,000円の費用が必要になります。
⑤ コケや藻などの汚れ
【補修方法】
建物の立地によっては、外壁にコケや藻などの汚れが付きやすくなります。 コケや藻は湿気をとどめてしまうので、外壁材の劣化が進みやすい状態です。 高圧洗浄機を使ってサイディングに付いている汚れを除去する方法が一般的です。 高圧洗浄機は家庭用も販売されていますので、定期的に洗浄することで綺麗に保つことができます。
【補修費用】
高圧洗浄にかかる費用の目安は200~300円/㎡前後です。 高圧洗浄は水圧を利用して汚れを洗浄しますが、頑固なコケや藻が発生している場合にはバイオ洗浄を行うこともあります。 バイオ洗浄にかかる費用の目安は300~500円/㎡前後です。
⑥ 外的要因
【補修方法】
飛来物により外壁にできた傷や割れ、給湯器の交換などを行った際には部分補修が必要になるケースもあります。 飛来物による傷や割れは、痛みの程度によってコーキングでの部分補修もしくは張り替えで対応することができます。 給湯器などを交換した場合の部分補修では、既存の色に合わせた塗装が最も簡単に補修する方法となります。
【補修費用】
飛来物による傷や給湯器などの移動によってできた場所の部分塗装、コーキングにかかる費用の目安は2,000~4,500円/㎡前後です。 既存の外壁の種類や使用する塗料のグレード・色によって価格は左右することがあります。 部分張り替えを行う場合は2~3万円の費用がかかってきます。
3、部分補修を行う際の注意点
部分補修は建物全体の外壁塗装を行うよりも補修にかかる費用を抑えることができます。 しかし、部分補修を行う際は目先の安さだけを考えず、劣化の原因や補修方法をしっかりと把握しておくことが重要です。 次に部分補修を行う際の注意点を解説していきます。
① 原因調査はしっかりと行う
部分補修を行う際には、部分的な傷みの原因をしっかりと把握した上で補修することが重要です。 表面に見えている傷みの原因がどこにあるかを調査することが必要です。 例えば、軒天にシミができた場合には部分的に塗装で補修するのではなく、雨漏りなどの可能性を調査することが重要なポイントになります。
② 部分補修でも足場代が必要なケースもある
補修費用を抑えることができる部分補修ですが、屋根や2階部分の壁などの高所での作業では足場代などの費用が別途必要になります。 脚立やはしごを使って作業することができても、作業する職人の安全や補修の精度にも影響するので、足場の設置は必ず必要になります。 部分補修で設置する足場代は、建物全体に設置するよりも費用を抑えることができますが、部分補修を何回も繰り返すことで足場代がかさんでしまうようでは、全体的に補修を行った方が結果的に費用が安いケースも考えられます。
③ 中途半端な仕上がりで美観が悪い
部分補修では、中途半端な仕上がりになることが多く、建物全体の美観を損ねてしまうこともあります。 建物の死角部分であれば部分補修の範囲も少なく済みますが、目立ちやすい場所ではある程度の範囲で部分補修を行うことも大事です。 入隅や出隅をうまく使って補修の範囲を区切ることで、柄の違いや色の違いも目立ちにくくなります。
④ 部分補修を何回も繰り返す可能性の抑止
基本的に外壁の傷みは、全体的に同じように劣化します。 日当たりなどの影響で部分的に傷みが早くなることもありますが、他の箇所も傷みが同様に進んでいると考えてよいでしょう。 つまり、目立つ傷みの箇所を部分的に補修しても数年後に他の箇所も傷みが目立つようになり、部分補修を何度も繰り返さなければいけない状況となります。 そのため、全体的に劣化状況をしっかりと確認してから部分補修か全体補修の検討が必要です。
4、部分補修ならDIYできる?
部分補修に必要なコーキングや塗装道具などは、ホームセンターでも簡単に入手することができます。 専門業者に依頼するよりもご自身でDIYで補修を行った方が費用を抑えられるケースもあります。 しかし、表面上の見た目の補修であればDIYでも問題ありませんが、重大な劣化に繋がるサインにケースもあります。 表面的には部分的なサイディングボードの腐食だとしても、原因が雨漏りや水漏れなどの場合には建物の構造体などへの影響も考えられます。 表面上の傷みだけではなく、内部の木下地や躯体が腐食しているケースもあるため注意が必要です。 部分的な傷みを発見した場合はすぐにDIYをするのではなく、専門業者の意見を聞いてからDIYを行う方がよいでしょう。
5、まとめ
外壁は部分補修でも対応することができ、傷みの種類によって補修方法や費用は変わってきます。 部分的な補修を行うことで、全体的な外壁塗装を行うよりも費用が抑えられるメリットがあります。 しかし、部分的な傷みが複数ある場合や高所での補修を行う場合には、計画的な補修が必要です。 特に高所での補修には足場の設置費用など高額になることもあるので、1度全体的に外壁塗装を行った方が長期的に見た場合の費用を抑えることにも繋がります。 また、現状は部分的な傷みでも、数年後に次々と傷みが増える可能性もあります。 そのため、部分的な補修を行う前に劣化状況を把握して長期的な目線で施工方法をどのように行っていくのか、しっかり検討していくことが重要です。
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