1、はじめに
高性能住宅とは、「夏に涼しく冬暖かい」「地震などの災害に強い」などの性能を持った家のことです。 安全・快適に暮らせるのはもちろんのこと、税金や補助金といった面でもメリットがあります。 今回は高性能住宅の特徴とメリット・デメリット、各種補助金・税金優遇について解説します。
2、高性能住宅とは?4つのポイント
高性能住宅とは、どのような住宅のことを指すのでしょうか? ポイントは「気密性・断熱性・耐震性・耐久性」の4つに優れているということです。
① 気密性
気密性が高い住宅とは、壁や窓などの「すきま」をできるだけなくし、すきま風を通さないように作られた家のことです。 昔の日本の家は、風通しの良さを重視してつくられており、窓や壁などにちょっとしたすきまががあいていました。 すきまがあいていると外の寒い空気や暖かい空気が入り、エアコンで調節した空気が逃げていってしまいます。冷暖房で室温を調整する現代の住まいにとっては、気密性の高さが重要です。 気密性を高めるには、高性能の部材や気密テープなどが使われます。 「C値(相当隙間面積)=床面積あたりどれだけすきまがあるか」という数値が指標となっており、C値が小さいほど気密性に優れています。
② 断熱性
高断熱住宅とは、断熱材などを使って外の気温の影響を受けにくくした住まいのことです。 冬の寒さや夏の暑さは、壁や窓を通して室内に伝わってきます。 壁の中に断熱材を入れる、断熱性能の高い窓を採用するなどの対策で、室内と屋外で行き来する熱の量が少なくなります。 「UA値(外皮平均貫流率)=外皮面積あたりどれだけエネルギーが逃げるか」という数値が指標になっており、UA値が小さいほど断熱性に優れています。
③ 耐震性
耐震性が高い家=地震に強い家のことです。 地震の揺れにどのくらい耐えれるかは「耐震等級」という1~3の指数で客観的に知ることができます。
・ 耐震等級1:建築基準法の基準を満たす ・ 耐震等級2:建築基準法の1.25倍の耐震性質を持つ ・ 耐震等級3:建築基準法の1.5倍の耐震性質を持つ ※ 建築基準法の基準=震度6強~7程度の大地震で倒壊せず、震度5程度で損傷しないレベル
④ 耐久性
長く安心して住める耐久性を持った家を選ぶことも大切です。 長期にわたって良好な状態で使えるようつくられた住宅は、自治体から長期優良住宅という認定を受けることができます。 長期優良住宅の条件には、劣化対策・耐震性・維持管理の容易性・可変性・バリアフリー性・省エネ性能・住宅環境・住戸面積といった項目があります。 長期優良住宅の認定は、ある程度の住宅性能を持っているという目安になり、税金面でもメリットが得られます。
3、高性能住宅のメリット
「気密性・断熱性・耐震性・耐久性」に優れた高性能住宅は、安全性やコストなどの面でメリットがあります。
■ ヒートショックを防ぐ
ヒートショックとは、温度差により血圧が急激に上がったり下がったりする健康被害のことです。 脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こし、命に関わることもあります。 冬場暖かいリビングから廊下やトイレ、浴室に行った時、ヒヤッとした寒さを感じたことはありませんか? 高気密高断熱の家では、このような室内の温度差が少ないため、快適性が高まると同時にヒートショック防止にもつながります。
■ 光熱費が抑えられる
気密性・断熱性が高い家は、エアコンなどで快適な温度に調整した空気を外へ逃がしにくくなります。 冷暖房のロスが少ないため、環境に優しく光熱費を抑えることにも繋がります。
■ 地震などの災害に強い
地震大国日本において、住宅の地震への強さは、安全に暮らし続けるために欠かせません。 耐震性はもちろん、家の耐久性を高めることで構造が劣化しにくく、地震や台風などによる被害を軽減します。揺れた時に建物が崩壊しないだけでなく、揺れそのものを防いで家具の転倒を減らすように工夫された住宅もあります。
■ 家が長持ちする
雨漏りや結露、シロアリ被害などは、家が劣化するスピードを早めます。 耐久性の高い部材を使い、水分の影響やシロアリ被害軽減の対策が適切にとられた家は、メンテンスに費用や労力をたくさんかけなくとも長持ちします。 住まいの寿命が延びると建て替えが少なくて済み、売却する場合も資産価値が下がりにくくなります。
4、高性能住宅のデメリットは?
高性能住宅というと「気密性が高いと換気はできるの?」「冬に暖かいということは、夏場は暑くないの?」と不安に思われる方がいらっしゃるようです。 しかしこういったデメリットは、24時間換気システムなどの導入で改善されています。
■ 気密性が高いとシックハウス症候群のリスクが高まる?
2003年以降、住宅には24時間換システムなどの設置が義務化されています。 計画的な換気が行われ、常に新鮮な空気の中で生活することができます。 すきま風が吹くような家では、一部の空気は入れ替えられているが、場所によっては空気がよどんでいるといったように、換気にムラが見られます。 気密性を高めて計画換気を行うことで、家中の空気をまんべんなく換気できるため、シックハウス症候群のリスクを軽減させられます。
■ 断熱性が高いと、夏は暑くない?
断熱性能が上がると、冬の寒さだけでなく夏の暑さも室内に伝えにくくなります。 エアコンなどの冷房で効率よく涼しい状態を作れるため、高断熱の家の方が夏場も快適に過ごせます。 また、窓ガラスから入る太陽の熱への対策として、遮熱性の高いガラスを選ぶことも大切です。
5、高性能住宅には補助金制度もある
省エネという観点から、国も高性能住宅を推進しています。 そのため、高性能住宅の新築リフォームには、補助金が給付されることもあります。
■ ゼロエネ住宅補助金
ゼロエネ住宅(ZEH)とは、断熱性能の強化などで消費エネルギーを抑え、太陽光発電システムなどでエネルギーを作り出すことで、実質的なエネルギー収支をゼロにした住宅のことです。 ゼロエネ住宅の条件を満たした住宅の新築や、ゼロエネ住宅への改修などに対して、補助金が支給されています。
■ エネファーム設置補助金
エネファームとは、水素と酸素から電気を作り出す、家庭用燃料電池システムのことです。 発電した電気を電化製品などで消費し、発電の際に発生した熱を給湯機に使いシャワーや床暖房などに役立てることができます。 指定されたエネファームの導入に対し、国による補助金制度が設けられています。
■ 長期優良住宅なら税金の優遇も
長期優良住宅の場合、所得税・不動産取得税・登録免許税・固定資産税などに対して一定の控除が受けられる制度があります。 例えば所得税の住宅ローン控除では、一般住宅だと400万円のところ、長期優良住宅の場合は500万円までの控除が受けられます。 長期優良住宅を建てると、節税効果が大きくなる可能性があるということです。
■ 自治体独自の補助金制度があることも
自治体によっては、省エネリフォームや断熱改修、耐震診断・改修などに対し、独自の補助金を設けているところもあります。 新築で家を建てる時だけでなく、断熱や耐震などのリノベーションを考える際にもチェックしましょう。
6、まとめ
気密性・断熱性・耐震性・耐久性に優れた高性能住宅は、健康に優しく安全性も高く、長い間安心して暮らせる住宅です。 夏は涼しく冬暖かい、快適な暮らしを実現できます。 新築時だけでなく、リノベーションでも断熱性や耐震性などを高めることはできるので、ぜひご検討ください。