外壁塗装は代表的な住まいのメンテナンスの一つです。単なる壁の修繕だけでなく、塗装をすることで断熱効果を高めたり、防水効果を高めたりすることもできます。特に、家の外壁を塗り替えると家の印象ががらりと変わるため、大規模な工事をせずに雰囲気を変えたいときにはぴったりの方法です。
そんな外壁塗装ですが、施工にあたっていくつか注意が必要なポイントもあります。思ったよりも高額な工事費用がかかってしまったり、手抜き工事をされてしまったりするケースもあるため、信頼できる施工業者を選ぶことがとても大切です。とはいえ、優良な業者をどう見分ければ良いか分からない方も多いはずです。判断基準の一つとして「資格の有無から判断する」と考える方もいるかもしれませんが、実際には資格によって業者の良し悪しを判断することは非常に困難です。
そこで今回は、塗装業者の従業員が保有する資格をもとに、優良な業者と手抜き業者を見極めるポイントについてご紹介します。
塗装業は資格なしでもはじめられる
外装塗装や屋根塗装などの塗装業はリフォーム業に分類されます。このリフォーム業は、資格や免許がなくても開業することが可能です。リフォームに関わる資格はいくつかありますが、中には資格を取得せずに運営している塗装業者もいます。
資格の有無は塗装業者のレベルや安心度を測る一つの指標にはなり得ますが、だからといって資格さえ持っていれば安心というわけではありません。無資格でも優良な業者はいますし、一方で資格を保有していても手抜き工事を行う業者もいます。
そのため、一つの目安として資格の有無を確認したうえで、他の部分も考慮にいれるよう意識しましょう。
持っていると安心!塗装で重要な国家資格
では、塗装工事に関する資格には一体どのようなものがあるのでしょうか。一口に塗装業の資格と言っても、数多くのものがあり、難易度の高い資格から講習を受講すれば取得できる資格まで様々です。ここからは、優良な塗装業者を見極めるための一つの基準となる資格についてご紹介します。
一級塗装技能士
塗装技能士は塗装に関する知識・技術・能力を示す国家資格です。厚生労働省によって認定され、等級は3級~特級まであり、試験は学科試験と実技試験の両方に分かれています。3級は学生を対象に実施され、2級からは2年以上の実務経験が必要となります。また、1級からは7年以上の実務経験が求められます。合格率は50%前後ですが、一発合格の確率は決して高くありません。
このように塗装技能士は難易度の低い資格ではないため、業者の腕を判断する一つの目安になるはずです。たとえ従業員が資格を有していなかったとしても、経営者や現場監督が資格を所持していれば、採用時に腕のある職人を見極めていたり、作業時にきちんと指導していたりする可能性は大いにあるので安心です。
塗装工事業の建築業許可
建築業許可とは、建設の完成を請け負うことを目的として建設業を行う業者が取得する許可証です。この建設業許可の中には塗装工事も含まれています。この許可証には国土交通省許可と知事許可の2種類のものがあります。軽微な工事のみ行う場合は許可証の取得は必須ではありませんが、500万円以上の工事を許可証なしで契約することはできません。建設業許可に必要な要件は以下の通りです。
1. 経営業務の管理責任者がいる
2. 専任技術者がいる
3. 安定的に企業を経営している
4. 誠実な契約を履行できる
5. 欠格要件に該当しない
上記の条件を満たすことで建設業が許可されます。ちなみに、許可の有効期限は5年となっており、更新が必要です。建設業許可証は塗装業者の技術はもちろん、会社が健全に運営できていることを示す指標でもあります。そのため、これらの要件をクリアしていることから塗装業に関するプロと言って差し支えないでしょう。
その他の資格
一級塗装技能士や建設業許可の取得はハードルが高い分、信用できる資格と言えるでしょう。しかし、塗装を行うにあたってそれ以外にも所有しているとさらに安心できるような資格は多数あります。手抜き工事をされないためには、ご自身が依頼する工事内容に合う資格を従業員が所有しているのか確認しましょう。
塗料調色技能士
塗料調色技能士とは、塗料を使用した色づくりの技能を認定する国家資格です。外壁塗装などに使用される塗料はいくつかの塗料を混ぜて色を作るケースが一般的ですが、できるだけ少ない原色数で短時間で調色することが求められます。
また、塗料は見る角度や光源などによって色合いが微妙に変化するため、経験を積んだ技術者でなければ見本通りの色を再現することは困難です。塗料調色技能士の資格を保持していれば、経験に裏打ちされた調色技術を持っていると判断して良いでしょう。
塗装指導員
塗装指導員は職業訓練指導員の一つであり、一級塗装技能士の上位資格でもある国家資格です。塗装指導員は一級塗装技能士よりも狭き門で、平成19年の合格者数を比較すると、一級塗装技能士の合格者数が116名に対して、塗装指導員の合格者数はわずか6名となっています。
また、1級塗装技能士の受験資格が実務経験7年であるのに対して、塗装指導員の受験資格は15年の実務経験が必要です。つまり、この資格保有者は塗装に関する知識・経験の双方を兼ね備えているプロフェッショナルと言えます。
有機溶剤作業主任者
有機溶剤作業主任者の資格は、有機溶剤を取り扱う仕事において必須の国家資格です。この資格を取得することなく従業員を作業に従事させると、事業者は労働安全衛生規則に基づき罰せられます。塗装工事で使用される塗料には有機溶剤が含まれているものが多いため、外壁塗装を行うには有機溶剤作業責任者の有資格者が必要です。
雨漏り診断士
雨漏り診断士とは、雨漏りの原因特定や建物の調査を行う、雨漏りのスペシャリストです。資格はNPO法人雨漏り診断協会が発行していて、民間資格です。この資格を有する者は、雨漏りの原因の特定から修復方法の提案まで的確に実施できます。
外壁塗装に関する知識や経験はあっても、雨漏りに関する知見が無いケースは珍しくありません。そのため、この資格を持っていることで、より幅広いケースに対応できる事業者だと言えるでしょう。
資格保有=優良業者ではない
今回は国家資格から民間資格まで、塗装業に関わる資格をご紹介しました。一級塗装技能士や塗装指導員などのハイレベルな資格もあれば、塗装業をするうえで必須の「有機溶剤作業主任者」の資格、ケースバイケースで保有していた方がいい「雨漏り診断士」のような資格もあります。
これらの資格は業者の技術や事業の安定性を測る一つの目安になります。一方で、塗装工事をするうえで最低限必要な有機溶剤作業主任者のみを置いているケースや、従業員の多くが有資格者であっても等級の低い資格の保持者ばかり在籍しているケースも珍しくありません。
そのため、資格を保持しているかどうかだけではなく、施工事例や口コミ、実績などもしっかりと確認して、総合的に判断するようにしましょう。