1、はじめに
外壁塗装は湿気やカビなどから私たちの家を守ってくれる必要不可欠なものです。 もし外壁塗装をしなければ、雨漏りやカビの繁殖など様々な問題が発生してしまいます。 お家の外観を美しく保つだけではなく、住んでいる私たちにとっても外壁塗装は欠かせないものです。 そして、外壁塗装は高度な技術が必要となるため、プロの職人が行います。 知識と技術があるからこそ、膨大な種類の塗料を適材適所にムラなく均一に塗っていくことができるのです。 しかし、中には知識と技術を悪用し、素人にはわかりづらい部分で手抜き塗装をする業者がいることも事実です。 今回は手抜き塗装工事の具体的な手口と、その対策を解説していきます。 外壁塗装工事を依頼する施工業者選びにお悩みの方は、参考になさってください。
2、実際によくある外壁塗装の7つの手抜き
外壁塗装の手抜きの悪質な点は、素人目にはわかりづらいところです。 残念ながら、完全に塗装工事が終わってしまうと、プロの目でもわかりづらい手抜きも存在します。 しかし、代表的な手抜き工事の手口を知ることで、塗装工事の前後で施工業者に指摘する事ができます。 特にポイントとなる手抜き塗装の手口を7つご紹介します。
① 塗装回数を減らす
外壁塗装は一般的に3回の塗装を行います。 最初に家の壁面に塗られる「下塗り」は、この後に塗られる「中塗り」と外壁を密着させる橋渡しの役目をしています。 下塗りをせずにいきなり外壁に塗料を塗っても、数年で劣化してしまいますが、下塗りを行うことで塗料・下塗り剤・外壁の3者がしっかりと密着するようになります。 また、下塗りの後に中塗り・上塗りと2回塗装を行います。 これは、十分な性能を発揮するために必要な塗料の厚さが1回ではできないためです。 1度塗装を行ってから乾燥させ、再び同じ塗装を行います。 このようにすることで、10年程度美しい状態を保つことができる外壁に仕上がります。 塗料や塗装する場所によって異なりますが、外壁塗装は3回塗りが基本です。 下塗りを行わなかったり中塗りだけで済ませてしまったりすると、塗料が本来の性能を発揮できなくなり、家にダメージを与えてしまいます。
② 天候に関係なく作業を行う
外壁塗料は、メーカーが品質を保証する気温や湿度によって決まっています。 一定条件のもと塗装することで、初めて塗料は本来の性能を発揮できるようになります。 そのため、塗料によっては雪や雨の日など悪天候の時には塗装作業ができない場合もあります。 通常の施工業者であれば塗料の性質や塗装時期を考慮して、塗装できない日数に計算に入れて見積もりを作成し、スケージュールを立てます。 しかし、中には短い納期で利益をあげるために、天候に関係なく塗装を行う施工業者もいます。 ずっと晴れていれば問題ありませんが、時には雨が降ることもあります。 悪天候の中で塗装作業を強行すれば、塗料が薄まってしまうばかりか、乾燥も十分にできません。 塗料メーカー指定の湿度や乾燥時間を置かずに塗装された外壁は、耐久性に欠け、数年で塗装面が剥がれてくる可能性があります。
③ 養生を行わない
外壁塗装と養生は切っても切れない関係です。 養生とは、塗料が塗装部分以外に付着するのを防ぐために使うものです。 一般的に使われるものは、薄いテープやビニールシート、細かい場所ではマスキングテープなどです。 養生をしっかり行わないと、花壇や車に外壁塗料が付着してしまったり、隣家にまで塗料が飛散したりすることも。 最悪の場合は、そこからご近所トラブルに発展する可能性もあります。 塗料が付着しそうな場所すべてにビニールやテープを張っていくのは大変な作業です。 手間も時間もかかりますが、しっかりと養生をするからこそ美しい仕上がりが期待できます。
④ 簡易的な足場での作業
塗装は家の2階部分や屋根にも必要です。 そのため、身長より高い部分を塗る場合、足場を組む必要があります。 しっかりとした足場を組むことで、安定した姿勢で均一に塗装をすることができるようになります。 しかし、足場は組み立てる手間だけではなく、基材の運搬費用や解体にも費用が発生します。 そのため、経費を節約する目的で少ない資材で狭い足場を作って塗装をする施工業者には注意が必要です。 足場は、塗装面での品質以外に職人の安全確保やしっかりとした養生をするために絶対必要です。
⑤ 塗料の偽装
ご自宅の外壁塗装に使われる塗料を選ぶ際、施工業者は色だけでお客様におすすめしているわけではありません。 外壁の材質や塗装に必要な予算、周囲の環境などを考えて総合的に判断しています。 そして、複数のメーカーから様々な種類の塗料が発売されています。 それぞれの塗料にメリット・デメリットがあり、全てにおいて最高の塗料はありません。 しかし、中には見積書に記載されている塗料と、実際の塗装に使われている塗料が変わっていることもあります。 高額な塗料を使う予定で見積書の金額を高く設定し、実際には安価な塗料を使うことで利益を出していたケースもあります。 塗料の偽装を防ぐためには、塗料が入っている一斗缶の品名と見積書の品名が一致するか、確認することが1つの方法です。 もう1つの方法としては、施工業者に塗料メーカーが発行している「出荷証明」をもらうことです。 出荷証明をもらうことで、指定の塗料が指定の数だけ納品されていることがわかります。
⑥ 全体的に雑
塗装は繊細な作業の積み重ねです。 細かな部分まで丁寧に塗装することで、水分やカビが侵入する可能性を下げてくれます。 しかし、中には全体的に雑な作業が行われていたケースも。 例えば、高い所や極端に低い場所の塗り残し、外壁に金具が付いている部分や隣家と入り組んでいる部分などの仕上がり不足が実際にあったケースです。 また、窓枠や目地に使われているコーキング材を打ち直さず、そのまま上から増し打ちを行うケースもあります。 塗装工事中はずっと見張っているわけにもいきませんが、外壁塗装の完成後に気づいた場合は、すぐに施工業者に連絡して対策をしてもらいましょう。
⑦ 縁切りを行わない
縁切りとは、屋根のスレート瓦同士が重なっているすき間を確保する作業のことです。 スレート瓦は積み重なっているように見えますが、実際には雨水の逃げ道となるすき間が空いています。 屋根の塗装を行った場合、ローラーで均一に屋根を塗ると、塗料が固まってスレート瓦同士のすき間を塞いでしまいます。 そこで、塗料が乾燥した後に刃物で本来空いていたすき間の部分を縁切りしています。 現在では、塗装前にすき間を確保するためのスペーサーも存在します。 このスペーサーや縁切りを行う手間を省略することで、不自然に安い見積もりを出しているケースもあります。必ず塗装工事が始まる前に縁切り有無を確認しておきたいですね。
3、外壁塗装の手抜きを見破る2つのポイント
外壁塗装の手抜きは、時間が経てば経つほど見破ることが難しくなります。 そこで、外壁塗装工事が始まる前後で今からできる対策を2つお伝えします。
① 立ち合いを行う
一番原始的な方法で、効果が高い対策が立ち合いです。 依頼主が塗装の現場に立ち会うことで、手抜き塗装をすることを防ぐことができます。 外壁塗装は複数の職人が同時進行で進めていく作業なので、全部を監視することはできませんが、それでも先ほどご紹介した塗料の偽装などは防ぐことができます。 全行程を立ち会う必要はありませんが、何か所かの工程を見回るだけでも効果があります。
② 工程表をチェック
専門的な用語も記載されている工程表は、一見したところでわかりにくいかもしれません。 しかし、工程表には塗装の計画や使われる予定の塗料などが記載されています。 実際の作業前にチェックすることで見積書との違いを見つけ、指摘することができます。 また、外壁塗装に立ち会う際も工程表を持参することで、実際の作業との違いを見つけることに役立ちます。 特に、塗装回数や日程、足場の組み立て・解体に必要な時間などはよくチェックしておきましょう。
4、外壁塗装工事の手抜きをさせない方法は?
そもそも手抜き工事をさせない方法はないのでしょうか? それには、最初から手抜き工事で不正な利益をあげる必要のない優良な専門業者と出会う必要があります。 信頼できる優良な専門業者を見つけるための方法を2つご紹介します。
① 複数の専門業者から見積もりを取る
外壁塗装は数十万前後の費用がかかる大きな工事です。 そのため、1社だけではなく必ず複数の専門業者から見積もりを取りましょう。 工事を受注するために、不自然に安い価格を出している専門業者があれば避けたいところです。 複数の専門業者から見積もりを取ることで、ご自宅の外壁塗装の相場を知ることができます。 手抜き工事をされないためにも、複数の専門業者から見積もりを取ることはとても重要なことです。
② 見積書の「裏」を取る
専門的な用語も書かれている見積書ですが、知識がなくても「裏」が取れる部分もあります。 例えば、ご自宅に使われる予定の塗料名をインターネットで検索すれば、塗料メーカーの公式ホームページを見ることができます。 公式ホームページには塗料の特徴や、乾燥時間・1缶当たりの塗装面積・価格まで記載されています。 その情報と見積金額に大きな開きがあれば、施工会社の担当者に質問してみるのも1つの方法です。
5、まとめ
外壁塗装は、ご自宅の周辺環境によって耐用年数が前後します。 そのため、数年で塗装が剥がれてしまっても周辺環境を言い逃れの理由にされてしまう可能性もあります。 外壁塗装はお家の寿命に直結する重要な部分です。 価格の安さだけで依頼する会社を選んでしまうと、数年後に大きな被害が生まれることも。 少しの手間で手抜き塗装を防げる可能性は大きく高まるので、これから外壁塗装工事をされる予定の方は実践してみましょう。
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