外壁材でなにが変わる?材質ごとの特徴や働きを徹底解説!

1、はじめに

外壁材は、色や質感によって住宅に与える印象を大きく変えることができます。また、材質によって断熱性、耐火性、耐久性、遮音性といった暮らしの快適さに関わる性能や効果も様々です。 外壁材を選ぶ際には、見た目だけではなく暮らしに影響するその効果、さらにメンテナンス方法までチェックする必要があります。 本記事では、見た目だけでは分からない外壁材が持つ特徴や働きを解説いたします。併せて、外壁材を選ぶ際のチェックポイントもまとめました。

2、外壁材ってなに?

「壁はどれも同じじゃない?」「デザインが良ければいいのでは…」と考えていませんか? 確かに、外壁材を選ぶ時にはまずデザインから検討することが多いでしょう。しかし、見た目ばかりにこだわると、後の生活に支障をきたすかもれません。はじめに、外壁材はどのくらい種類があるのか、外壁材で何が変わるのかを見てみましょう。

【外壁材の種類】

国内の一戸建て住宅の外壁材で、約70%を占めるトップシェアを誇るのは「窯業系サイディング」です。サイディングは色や模様が様々で、木目調・レンガ調・石積調など種類が豊富。「レンガの壁かと思ったらサイディングだった」なんてことも多くあります。デザインが多用でどんなデザインの住宅にも適用でき、さらに低価格とあって多くの一般住宅に使用されています。 他には、モルタルという外壁材が約10%程度、その他5%以下の割合で金属サイディング・木質系サイディング、タイルなどが使われています。

【なにが変わる?】

窯業系サイディングが最も利用されている理由のひとつは、施工がしやすいことです。外壁材によって施工時間や手間が変わり、例えばサイディングは板状の外壁材を貼り合わせていく方法であるため、スピーディに組み立てられます。一方でモルタルは、左官コテで丁寧に塗りあげていかなくてはいけません。施工の手間が変われば、もちろん価格も大きく変わります。 また、外壁材の原料そのものの性質が変わることで、耐久性や耐震性・断熱性が異なります。窯業系サイディングは比較的安価で取り入れやすい外壁材ですが、耐久性が弱くメンテナンスを必要とします。メンテナンスの手間がなく耐久性が高い外壁材はタイルや漆喰が当てはまりますが、価格が比較的高価で初期費用がかさみます。 このように、外壁材によって得意・不得意があり、お住まい地域の風土や予算によって相性の良い外壁材が異なってくるのです。

3、外壁材が持つ効果とは

外壁材にはどのような性質があるのでしょうか?外壁材に見られる主な特徴やその効果について見てみたいと思います。

【断熱性】
                                        
壁の断熱性能は、住宅の住み心地を大きく左右するため最も注目したいポイントです。断熱性が高い家は、厳しい寒さの中でも室内が温まりやすく、夏には涼しさを維持できます。 断熱性が高いと言われている外壁材は、スチールやアルミニウムを原料とした金属サイディングや天然木でできた木質系サイディングです。これらは熱を逃しにくい性質を持つためです。しかし、他の外壁材でも壁の内側に断熱材を合わせて施工することで、断熱効果を上げることができます。
【遮音性】
                                        
遮音性とは、生活音を外部に響きにくくする効果と共に、外部の騒音を遮断する効果があります。ご近所とのトラブル回避のために音が漏れないようにしたい場合、住まいの近くに踏み切りや大きな道路がある場合などは、外壁の遮音性を意識したほうが望ましいと言えます。 遮音性の高い外壁材は、音を反射させやすい性質を持ちます。代表的なものでは「ALC(軽量気泡コンクリート」です。層の中に空気を含むため音が通過しにくいことが特徴です。 また、音を遮るためには壁の厚みが重要です。一般的には、壁の厚みがあるほど遮音性が高くなります。厚みを持たせるためには外壁材が軽量でなければならず、主に金属サイディングやALCが厚みを出しやすい材質です。
【防水性】
                                        
住宅の壁は、常に雨風の影響を受けやすい部分です。防水性が低いと、壁材が剥がれたり、色褪せ・汚れの着色などが起こり、見た目や性能に問題が起こります。外壁材の種類によっては、材質自体に防水性がほとんどないものもあります。防水性が劣る場合は、表面を塗装することで防水性を高めています。 ただ、表面の塗料は時間の経過と雨水の影響を受けて、少しずつ塗装が剥がれるため数年に一度は塗り直しが必要です。

4、人気の定番外壁材「サイディング」

サイディングとは、板状にした建材をいくつも並べて貼り合わせる外壁材を言います。平らな板をサイディングボードと呼びます。サイディングボードの原材料は様々ですが、主に使われているのは、窯業系・金属系・木質系の3種類です。

【窯業系】

窯業系(ようぎょうけい)とは、粘土や石灰岩、セメントなどを材料にして形づくったものを、釜(かま)で焼いて製造したものを言います。高熱で焼いて作られるため、耐震性・耐火性が高いことが特徴です。 型を変えれば様々なデザインに製造可能であるため、レンガやタイルに似せたデザインや塗り壁風のサイディングボードもあります。色も自由自在なのでラインナップが多いことが魅力です。 「おしゃれな一戸建てに住みたい」「いろいろなデザインから選びたい」という方には、窯業系サイディングがおすすめですね。
                                       
【金属系】
                                        
ステンレスやアルミニウムなどの金属でできているサイディングを、金属系サイディングと言います。デザイン性が高く、屋根材としても人気の「ガルバリウム鋼板」も金属系サイディングのひとつです。 金属なのでひび割れがないことはもちろん、防水性が高くメンテナンスの手間が軽減でき、断熱効果も期待できます。軽量で屋根や壁を支える柱(躯体)への影響が少ないため、厚みを出して遮音性を高めたり、断熱材を組み合わせることも容易です。 見た目は金属独特のスタイリッシュさに溢れていて、モダンな住宅デザインによく合います。しかし最近では金属系のシャープさを活かしながらも、石積調やレンガ調に表面加工するケースも増えつつあります。
                                       
【木質系】
                                        
天然木を使用したものを木質系サイディングと言います。窯業系サイディングで木目調に施している外壁材もありますが、やはり天然の木目に勝るものはありません。木材本来の温かみや自然な風合いを楽しみたい方は、木質系サイディングがおすすめです。 天然木は熱伝導が弱いため、高い断熱性を誇ります。また遮音性・耐熱性にも優れています。ただ水の吸水力があるため、表面に防水性の高い塗料を使用し仕上げています。それでもやはり水分を含みやすい特徴があるため、こまめなメンテナンスが必要です。窯業系や金属系と比べると、初期コストもランニングコストも高くなります。

5、その他の外壁材の特徴

サイディングの他にも特徴的な外壁材があります。ここでは、特に使用されることが多い4種類の外壁材をチェックしてみましょう。
                                       
【漆喰】
                                        
漆喰は、石灰石を焼いて造られた消石灰(水酸化カルシウム)に、糊や繊維質を練り混ぜて作った外壁材です。職人さんが手作業で塗りあげて形づくります。 日本では古くからお城やお屋敷に使われていて、昔に建造された蔵の真っ白な外壁はほとんどが漆喰です。防火性に優れているため、火事が多かった江戸時代には重宝された外壁材のひとつ。湿度を調整する性質があり「呼吸する壁」とも言われます。 漆喰は耐久年数が100年以上と言われるほど丈夫な壁材ですが、定期的なメンテナンスが必要です。基本は真っ白な外壁なので、汚れが付着すると非常に目立ちます。きれいに保つには、こまめな清掃や塗り直しが必要です。 施工費用は他の外壁材に比べて高価です。漆喰が乾くまでに時間がかかるため施工の手間が多く、また近年では漆喰を扱える職人さんが減りつつあるためです。
                                       
【モルタル】
                                        
モルタルとは、セメントに砂と水を混ぜた外壁材です。キメが細かく仕上がりが美しいことが特徴です。外壁材だけでなく、レンガの接着剤やコンクリートの仕上げ剤としても使われます。セメントを思い浮かべると、灰色の壁を思い浮かべる人が多いと思いますが、外壁材として使う時は、白や茶色など住宅デザインに合わせて色を選ぶことができます。 職人の手でコテを使って塗りあげていくため、手作り感のある温かい質感が魅力です。またサイディングのようにつなぎ目がないため、見た目が美しく高級感もあります。しかし、塗り壁なので、劣化や強い衝撃、地震などでヒビ割れしやすいという弱点があります。また防水性がほぼ無いため塗料を塗って仕上げますが、時間の経過と共に塗料が薄れてチョークのような粉が発生したり汚れが付着しやすくなります。 国内では80年代に人気の高かった外壁材ですがコスト面や施工の難しさから、サイディングが主流になってからはほとんど見かけなくなりました。
                                     
【ALC】
                                       
ALCとはAutoclaved Lightweight aerated Concreteの略で、日本語では軽量気泡コンクリートと呼ばれます。コンクリートを高温の蒸気で圧縮することで、内面にいくつもの気泡が生じます。一般的な手法で造られたコンクリートとは異なり、気泡の中に空気を含むため、重量が通常のコンクリートに比べて1/4に抑えられています。そのおかげで、住宅の躯体に対する負担が少なく、耐震性・耐久性に優れています。 また、空気は音や熱が伝わりにくいため、断熱性・遮音性も高い性質があります。ただ、吸水性が高いため、塗装などによる防水加工の強度によって耐久性が変わります。 施工する際は、ALCをパネルに成型したものを使うため工期が短縮され、コストも軽減できるメリットがあります。
                                       
【タイル】
                                        
タイルとは粘土や陶土、または長石などの石を砕いてから板状に成型して焼き固めたものを言います。住宅には外壁材の他、植物との相性が良いため外構デザインにも使用されます。 自然な風合いと質感が特徴で、天然素材のぬくもりと上質感があります。コストはかさみますが、タイル調のサイディングには表現できない独特の重厚感も魅力です。 タイルの外壁材は、一枚一枚を丁寧に貼り合わせることや製造に手間がかかるため、初期費用は高くなる傾向にあります。ただ、耐久性・防水性に優れているためメンテナンスコストがほとんどかかりません。雨水や夏の陽射しにも強く、気候が厳しい地域にも適しています。

5、最適な外壁材を選ぶ4つのポイント

様々な外壁材がありますが、どのような基準で選んだらよいでしょうか?選ぶ時に重要なポイントがあります。価格・耐久性・メンテナンス費用・デザイン性の4つのポイントを確認してみましょう。

【価格】

外壁材は材質や性能によって、材料費・施工費といった価格が大きく異なります。例えば、サイディングは大量生産が可能な建材であり、施工も簡単で手間が少ないことから、比較的低価格で導入することができます。 対して、モルタルやタイルは施工に手間がかかることから初期費用が高額になります。ただ、価格に見合ったグレード感や重厚感は確かです。また材質にこだわればそれだけ耐久性が高く、美しさが長持ちするという魅力があります。

【耐久性】

外壁材の種類によって耐久性が異なります。耐久性とは、機能や美しい見た目を維持しやすく、劣化に対抗できる性能を指します。 外壁材の劣化は、主に汚れやカビの付着、色褪せ、ヒビ割れ、剥がれ、吸水があります。汚れ程度の劣化であれば生活に問題はありませんが、状態がひどくなると外壁が剥がれて耐震性や防水性が低下するなど安全面にも影響します。 前述で紹介した外壁材を例にあげると、劣化が目立ち始める年数はサイディングで約5~10年、モルタルや漆喰といった塗り壁タイプは約10年ごとに掃除や塗り直しが必要です。それに比べてタイルは雨や気候の変化に強く、数十年に一度の掃除程度で大がかりなメンテナンスはほぼ必要としません。 また、メンテナンスを繰り返すうちに劣化の状態を回復できない時がきます。いわば寿命がきたら、全面リフォームを行わなければなりません。例えば、サイディング系は30~40年を目安にすべての貼替えが必要とされます。ただ、丁寧なメンテナンスや使用する塗料のグレードによって耐用年数を引き延ばすことが可能です。 一方で、漆喰やタイルは100年以上の耐用年数があるとされ、丁寧にメンテナンスをしていれば半永久的に使用できます。

【メンテナンス費用】

外壁材にかかるコストは初期費用だけでなく、数年後劣化した際にかかるメンテナンス費用(ランニングコスト)があります。コストを抑えるために材料費が低価格な外壁材を選んでも、長い目で見ると修理費用を含めて高額になってしまうことも考えられます。 例えばサイディングは、初期コストがタイルの約1/2に抑えられるメリットがありますが、メンテナンスが多くなるため約10年ごとに修理工事をすることになります。すると、約30年後にはタイルのほうがトータルで安く抑えられる結果になることも少なくありません。 メンテナンス費用は、外壁材やメンテナンス内容にもよりますが一般的には約60~100万円程度かかります。外壁材を選ぶ時には、メンテナンス費用も事前にチェックしておくと安心ですね。

【周りの住宅の雰囲気に合わせる】

外壁材を選ぶポイントに「デザイン性」があります。デザインを検討する際には、自分の好みだけでなく、周辺の建物との調和性も大切にしなければなりません。良いデザインの外壁材でも、街並みとの一体感がなければデザイン性が損なわれて違和感が残ってしまいます。景観は周囲の人々にも大きな影響を与えるため、外壁の色やテクスチャーは慎重に選ばなければなりません。地域の条例によっては、景観に関する厳しい基準が定められていることもあります。

6、まとめ

外壁材は見た目だけでなく、住まいの気候や風土に合わせて選ぶとよいでしょう。また、住む年数も考慮するとコストやお手入れの手間を軽減できます。外壁材はそのまま放置していると、外観の美しさを損なってしまいます。どんな外壁材でも定期的なメンテナンスは必須。汚れや雨水の跡をきれいに掃除することはもちろん、ヒビ割れや剥がれは早めに修理しましょう。 またメンテナンスの頻度や手間のかけ方によって、耐久性が大きく変わってきます。美しい外壁を長持ちさせるには、愛着を持って手間暇をかけることが大切ですね。外壁材の耐久性は、表面に塗る塗装材によっても大きく異なります。コストをかけずに性能が弱い塗料を使うと、早期にメンテナンスが必要になります。一方で、性能が良い塗料は初期コストがかかりますが、長期的な目線で見るとコストも手間も削減できる可能性があります。 塗料もグレードによって種類が豊富で、また何回重ねて塗るかも重要です。塗料の性質や塗り方にも注目して検討してみてくださいね。