1、はじめに
日本のような湿度の高い気候では、住宅の中で結露が起こりやすいです。 気温の低い冬の朝方に、窓が結露でびしょ濡れということはよくあります。
日本の住宅の多くは木造ですが、木は水にとても弱く、長時間水分を含むとカビが生えたり腐ったりしてしまいます。 大事な柱が腐ってもろくなっていることや、壁がカビだらけになっていることもあります。 怖いことに、建物の裏側の目の見えない部分でじわじわと侵食されていくので、気づいた時には深刻な状態になってしまっていることも多いです。 「外壁塗装の工事をお願いしたら、壁の中が腐食していることがわかって、工事が予想よりも高額になってしまった」というケースもあります。
住宅で結露が起きる仕組みを理解して、できるだけの予防をしておくことで、住宅を長持ちさせることができるでしょう。 実は外壁塗装工事は、結露対策の絶好のチャンスなのです。 今回は結露対策も含めて徹底解説します。
2、結露が起こる仕組み
結露は、どうして起きてしまうのでしょうか? 結露が起きやすい冬場を例に挙げて、解説します。
冬場の朝方はとても寒く、建物の窓ガラスは外から冷やされて冷たくなっていきます。 一方、部屋の中は外よりも気温が高く、冷たい窓ガラスより室内の空気の温度が高いという状況です。 そして冷たい窓ガラスに温かい空気が触れると、空気が急激に冷やされます。 これにより、空気の温度が下がることで空気中の水分があふれてしまい、水滴となって外に出てきます。 これが結露です。
このように、温度の違うものが触れ合う場所で結露は発生します。 温度差が大きければ大きいほど、結露の量が多くなります。 また、湿度が高く空気中の水分が多ければ多いほど、結露の量が多くなります。
住宅の場合、外気温と室内の温度に差があるために、結露が起きやすい条件となってしまいます。 特に最近では「内断熱工法」という、壁の内部に断熱材を敷き詰めることで、外の温度の影響を受けにくくすることが主流です。 そのため、外気と室内温度の差がより一層大きくなり、結露しやすくなっていると言えます。 高湿度な気候の日本の家屋では、結露が発生しやすい危険な状態になっていることが想像できるでしょう。
窓ガラスや壁が結露する以外にも、壁の内側、すなわち外壁と室内壁の間が結露してしまうことを「内部結露」と言います。 内部結露は、湿気を含んだ空気が壁の中に入り込んでしまうことで発生します。 壁の内部には、断熱材がびっしりと充填されているため、空気の逃げ場がありません。 風通しの悪い状態で湿った空気は、物に触れて結露しやすくなっています。
住宅の中で内部結露が起こりやすい場所は、外壁内部や天井裏、床下などの外気と近い場所です。 他にも、浴室や台所近辺の湿気が多い場所や、暖房がある部屋と暖房がない部屋との境目も結露が起きやすいので要注意です。
3、施工不良が原因の場合もある
断熱の施工が不十分なことが原因で、内部結露が発生することもあります。 壁内部に設けられている防湿層に隙間があり、湿気を含んだ部屋の中の空気が壁の中へ入り込んでしまうと結露の原因になります。 ひと昔前には、内部結露による深刻な被害の事例が報告されていました。 しかし最近では、内部断熱の問題点が知られるようになり、断熱材の施工技術も上がったことで改善してきています。
内部結露を防ぐには、 ① 隙間を作らないようにしっかりと細かい部分まで防湿層を張り巡らせること ② 万が一湿気を含んだ空気が入り込んだ時のために、湿気を排出する通気層を確保すること
この2点が重要です。
4、内部結露が起きるとどうなる?
壁の内部で起きている結露には、なかなか気づくことができません。 そのため、発見が遅れてしまうことも多々あります。 いつの間にか木材が腐食して、建物の構造部にまで影響してしまうというのが、内部結露の怖いところです。 「なんとなく部屋の中がカビ臭い」 「部屋の一部分にカビが生えている」 「壁紙のはがれやふくれが生じている」 といった場合には、内部結露が原因かもしれません。 早めに専門業者に点検してもらいましょう。 そして内部結露が見つかったら、できるだけ早期に対策する必要があります。
壁の中で内部結露が起きてしまうと、どうなってしまうのでしょうか? ここからは、外壁の内側で何が起こるのかを解説していきます。
【カビが生える】
室内から壁の内側へ向かって、防湿材の隙間から入り込んだ湿気は、通気性の悪い断熱材の中にじわじわと溜まっていきます。 断熱材や壁の中の柱に水滴がつくと、いずれカビが生えて黒く変色し、腐ってしまいにおいを発するようになります。
【構造材が腐食する】
壁の内部は、木材でできた柱や鉄材でできたボルトなどの部材を組み合わせて作られています。 そして、これらの多くは水分にとても弱いです。 木材が水分に長時間触れると、腐ってしまいます。 腐った木材は、シロアリを呼び寄せる原因にもなります。 金属の場合は錆びてきて、ひどくなると穴が開いてしまいます。 建物の根幹となる柱が腐ってしまうと、建物は途端にもろくなってしまいます。 腐食はじわじわと広がり続けますので、問題は深刻です。 大きな地震などの時に、もろさを露呈してしまいかねません。
家の外側を守っている外壁材は、水に強いイメージがあるかもしれません。 しかし現在主流の窯業系サイディングは、セメントを主成分としており、水を吸い込みやすい性質です。 外壁は塗装で覆われているために水をはじくことができますが、内側からの水分にはとても弱くなっています。内部結露は、外壁材へも悪影響を及ぼします。
【断熱材の機能が発揮できない】
断熱材は、グラスウールやロックウールなどの繊維状の素材でできています。 これらの素材は湿気を含むと縮んでしまう性質があり、水分の重さで下にずれてしまうこともあります。 断熱材は、隅々まで敷き詰められて隙間がないことで初めて性能を発揮できます。 形が変わってしまい隙間ができると、断熱効果がぐっと下がってしまいます。
【塗装がはがれやすくなる】
外壁材の外側は、塗料を塗って塗膜を形成し、雨や紫外線の刺激から保護しています。 しかし外壁が内側からの湿気で水分を多く含んでしまうと、外壁材の伸縮が起こり、塗膜がはがれたり外壁材の反りや浮きが起きたりします。 塗膜がはがれてしまうと、外壁材は水分を吸い込みやすくなります。 これによりますます外壁材の痛みが進んでしまうという、悪循環に陥ってしまいます。
5、もし内部結露が起きてしまったら
内部結露は、放置しておいても改善することはありません。 むしろ外壁に塗装が施されていることで通気性が悪くなり、ますます内部結露が進んでしまうケースも考えられます。 もしも内部結露に詳しくない業者が、何もせずに外壁塗装工事を進めてしまうと、最悪の場合には新しい塗膜がすぐに剥がれてしまいます。 内部結露は、気が付いた時点でできるだけ早期に対応しなければいけません。
断熱材にカビが発生していたり、木材が腐食しているなどさらに深刻な場合には、一度発生したものは補修できないため、全て交換となります。 さらに、再び同じことが起きないようにきちんと原因を突き止めて、対策を講じなければなりません。 状況によっては、大掛かりな工事となってしまうこともあります。
6、内部結露の予防方法とは?
「内断熱工法」のデメリットである内部結露を防ぐためには、外壁の中の通気をよくする方法があります。 断熱材と外壁の間に通気層を設けて、湿気を外部に放出できるようにする仕組みです。
他にも「外断熱工法」は湿気が壁の中に入り込まず、内部結露が起きづらいとされています。 内断熱工法で建てられた住宅を外断熱工法に変える、「断熱リフォーム」と呼ばれる工事もあります。 これは、既存の外壁の外側に断熱材を取り付けていく施工方法です。 ただし、すでに内部結露が原因で壁の内部が劣化している場合は、断熱リフォームをする前に断熱材を取り除かなくてはなりません。 そのため、外壁の張り替えが必要になってしまいます。
普段からできる予防法としては、室内の湿度が上がりすぎないように気をつけることです。 特に日当たりの悪い部屋や水回りでは、換気をこまめにすることがおすすめです。 室温も極端に上がりすぎないように心がける必要があります。 目安は室温20℃、湿度60%程度です。 ストーブや加湿器の使い過ぎにも注意しましょう。 入浴時には、熱交換型換気扇を利用するのも効果的です。
7、外壁塗装でできる内部結露対策
外壁塗装工事は、内部結露対策の絶好のチャンスです。 塗料選びを工夫することで、内部結露対策を行うことができます。
■ 結露に強い塗料を選ぶ
塗料の中には、断熱・遮熱効果に優れたものがあります。 塗料の断熱効果が高ければ、外壁の温度は外気温に左右されづらくなり、壁面と室内温度の差が小さくなるため結露が起きにくくなります。
■ 熱を吸収しづらい色を選ぶ
外壁塗装の際には、今までの外壁の色にとらわれずに色を選ぶことができます。 そこで、熱を吸収しづらい色を選ぶというのも1つの対策です。 濃色の建物は、どうしても熱を吸収しやすくなってしまいまい、外壁の温度が高くなってしまいます。 外壁の色を白に近づけるだけでも、温度の上昇を抑えることができます。 ある塗料メーカーの実験では、濃色系の外壁と淡色系の外壁で温度差が10℃以上あるという結果が出ています。
■ 親水性が高い塗料を選ぶ
親水性とは、水に馴染みやすい性質のことです。 反対に水を弾きやすい性質を撥水性と言います。
実は外壁塗装を行うことで、内部結露がひどくなってしまうケースがあります。 これは、おそらく撥水性の高い塗料を塗ることで外壁内部の湿気が放出できずに、中に溜まり結露が起きやすくなっていると考えられます。 親水性の塗料であれば、透湿性があるため湿気が溜まりにくくなります。
8、まとめ
内部結露は、塗装だけでなく建物の構造すら劣化させてしまいます。 内部結露が起きる仕組みを知っておくことで、大きな問題が発生する前に予防できるようにしておきましょう。