1、はじめに
東日本大震災から11年が経過した今年3月以降、全国的に大規模の地震が頻繁に発生しています。 3/16には福島県沖でマグニチュード6.9の地震が発生し、地震の影響により東北新幹線が脱線した映像が報道されたり、火力発電所が停止し関東地方に「電力需要がひっ迫警報」が出される等、改めて地震対策の必要性を感じた方も多いかと思います。
マグニチュード6以上の巨大地震になると建物の損傷が懸念されますが、中でも住宅の耐震性に関わる重要な項目の1つとして注目すべきなのが屋根です。 東日本大震災の際も多くの瓦屋根の住宅が倒壊し、甚大な被害が発生しています。 リフォームで建物全体の耐震性を上げ、揺れによる家屋の倒壊や屋根の落下を防ぐことが可能です。 今回はどのような屋根のお家がリフォームが必要なのか、そしてどのような屋根材が地震に強いのかご説明します。
2、東日本大震災で被害の多かった屋根は?
東日本大震災の際に屋根の被害に遭い、工事を行った283軒(宮城県・栃木県・茨木県・埼玉県・千葉県の5県)の被害に遭った屋根のデータをご紹介します。
【屋根の形状】
寄棟屋根(137軒:49%) 切妻屋根(96軒:34%) 入母屋屋根(46軒:16%) 方形屋根(1%)
【屋根材の種類】
日本瓦(239軒:85%) セメント屋根材(19軒:7%) S形瓦(12軒:4%) F形瓦(8軒:3%) フレンチ瓦(3軒:1%) スレート屋根(1軒) 金属屋根(1軒)
日本瓦が全体の85%を占めており、ほとんどが古い日本瓦屋根でした。 改めて古い日本瓦屋根は地震対策が必要だということがわかります。
3、巨大地震による瓦屋根の被害
巨大地震による瓦屋根の被害の中で、瓦屋根の棟部(屋根の頂点部分)が崩れる被害が多く発生しています。 しかしこれはすべての瓦屋根で発生することではありません。 旧工法と呼ばれる古い家で施工された瓦屋根で多く発生しているという特徴があります。 旧工法では瓦を葺き土だけで固められているからです。 しかし、ご自宅の瓦屋根が旧工法なのかどうかはわからないと思います。 簡単な見分け方をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
① 屋根の種類を確認する
まずはご自宅の屋根が昔ながらの波のある日本瓦かどうか確認してください。 日本瓦の場合は旧工法の可能性が高いと言えます。
② 日本瓦の頂点部分を確認する
頂点部分に茶色や緑色、シルバーの緊結線(銅線等)が見えるか確認してください。 銅線が見える場合は、一度専門業者に点検してもらうことをおすすめします。
また地震被害に遭った後に雨が降り、壊れた屋根からの雨漏りも多く発生しています。 東日本大震災の際は被害戸数が多かったこともあり、ブルーシートでの応急処置が間に合わず被害が大きくなってしまいました。 木造住宅で雨漏りが発生し建物内に水が入ってしまうと、木材が腐ってしまったりシロアリが発生したりする原因となります。 屋根が損壊してしまった場合、雨漏り対策は迅速に行う必要があります。
4、屋根が重いほど地震の揺れは大きくなる
地震の揺れは建物の高さが高いほど、そして屋根の重さが重いほど大きくなります。 なぜなら建物の重心が高くなり、全体のバランスを欠きやすくなるからです。 特に瓦屋根は1坪当たり約150㎏もの重量があるので、地震で屋根が大きく左右に揺れればその重量が大きな負担となり、柱や壁に亀裂を作る一因となることもあります。 従来の日本家屋に多い瓦屋根にはこうした耐震性の懸念が存在するのです。
そこで検討したいのが「屋根の軽量化」です。 日本瓦は風雨に強いため昔ながらの住宅には多く使われていますが、住宅の耐震性能が不十分だと地震の際に躯体が屋根の重さに耐えきれずに倒壊するリスクがあります。 現在のように耐震基準が定められていないため、地震で建物が揺れた際に柱などにかかる負担が軽くなるようあえて瓦が落ちやすいように施工されているものもありますが、落下によるケガのリスクを考えるのであれば地震が起こる前に軽い屋根材に葺き替えておいた方が安心と言えるでしょう。
5、地震に強い屋根材とは?
日本家屋に多い瓦屋根を地震対策でリフォームする場合は、スレートやガルバニウム銅板などの屋根材が適しています。
■ スレート屋根
スレート屋根とは、セメントと繊維材料を高温高圧下で成形し、その上から塗装を施した屋根材です。 日本の戸建て住宅の屋根材としては最も普及しており、カラーやデザインが豊富なため人気の屋根材です。
【メリット】
① 価格が安い
施工に使用する部材がスレート本体以外にほとんどないため、安い価格で施工できるのが大きな特徴です。 なるべくコストを抑えたい方にはおすすめです。
② 耐震性が高い
スレート屋根は暑さ約5㎜の軽い屋根材です。 瓦屋根と比べると半分程度の重さにしかなく、1平方メートルあたり21㎏と非常に軽いことが特徴です。 建物にかかる負担が少なく、地震の揺れにも強いです。
③ 施工しやすい
日本の戸建て住宅の屋根材として最も普及しているため、依頼できる専門業者が多いことがメリットです。 依頼できる専門業者が多いと新築工事だけではなく、リフォームやメンテナンスの時にも依頼しやすいと言えます。 長い目で見ても安心できる点が大きな特徴です。
【デメリット】
① 塗装メンテナンスが必要
スレート屋根の素材には雨水を防ぐ防水性がないため、生産時に塗装することで防水性を高めています。 塗料は紫外線や雨風にさらされることでいずれは剥がれてしまいます。 塗装が剥がれたままにしておくと防水性が失われて雨漏りの原因となるため、定期的に塗装メンテナンスが必要となります。
② ひび割れしやすい
スレート屋根は他の屋根材と比べてひび割れしやすいことがデメリットです。 塗装が剥がれて防水性が失われることによって、急激な雨水の吸収と乾燥を繰り返すことでひび割れが起きてしまいます。 また、スレートに切れ込みを入れる等少し凝ったデザインの場合はより割れやすくなります。
③ 雨漏りしやすい
スレート屋根が雨漏りしやすい原因は主に3つあります。
・ 塗装が剥がれて雨水が浸み込む ・ ひび割れ部分から雨水が侵入する ・ 反りや浮き部分から雨水が侵入する
上記の原因はすべてスレート屋根の塗装が剥がれたことで起きてしまいます。 放置しておくと雨水が深部まで入り込み、屋根だけではなく建物全体の劣化が深刻になる恐れがあります。
スレート瓦にも様々な種類があるので、専門業者を相談してあなたのお家に合った素材を選びましょう。
■ガルバニウム銅板
ガルバリウム銅板とは、表面にアルミニウム・亜鉛・シリコンのメッキを施した薄い鉄板です。 ガルバリウム銅板が登場したのは40年前で、それまで金属屋根材として主流だったトタン板に比べて錆びにくというメリットがあり、急速に普及しました。
【メリット】
① 軽量で耐震性が強い
ガルバリウム銅板の重さはスレートの5分の1、瓦屋根の20分の1と非常に軽量です。 一戸建て住宅は屋根の重量が軽いほど地震の揺れには強くなるため、ガルバニウム屋根は最も耐震性に優れた屋根材と言えます。
② 防水性が高い
ガルバリウム銅板は金属であるため吸収性がありません。 そのため雨で濡れて水を通してしまったり、凍害によりボロボロになったりすることがなく、雨漏りに強い屋根材です。
③ 形状の自由度が高い
薄い金属板であることから、ガルバリウム銅板は様々な形に加工することができます。 そのため、様々な形状の屋根に対応可能で、意匠の自由度も高い屋根材と言えます。
【デメリット】
① 断熱性が低い
金属は熱伝導率が高い素材です。 そのためガルバニウム屋根も素材自体の断熱性能は低く、それを補う工夫が必要になります。 具体的には屋根面を白に近い明度の高い色で塗装する、遮熱塗料を使用する、小屋裏断熱や通気工法で施工する、断熱材と一体化した製品を使用する等の対策が考えられます。
② 遮音性が低い
薄い金属板であることから、遮音性の低さもガルバリウム屋根のデメリットです。 素材単体で使うと雨音が室内に伝わりやすいため、銅板の裏には断熱を兼ねた制振材を貼る等の対策がとられています。 そういった製品を選ぶのであれば問題ありません。
ガルバニウム銅板の重量は1坪当たり約17㎏とスレート瓦と比べても非常に軽量です。 暴風雨に対する耐久性は瓦の次に高いとされています。 台風が多い地域にお住まいなら、暴風に備えてスレート瓦からガルバニウム銅板へののリフォームを検討してもよいでしょう。
スレート屋根からガルバニウム銅板にリフォームする場合は、スレート屋根の上から屋根材を取り付けるカバー工法で工期や費用を抑えることも可能です。 しかし、カバー工法ではリフォーム前よりも屋根が重くなり、かえって地震の影響を受けやすくなってしまうので、耐震性を優先するならカバー工法よりも工期と費用がかかりますが葺き替えを選択しましょう。
6、まとめ
東日本大震災発生後も屋根材本体や足場の供給が不安定となり、専門業者にも修理の依頼が殺到するため通常よりも修理に時間がかかります。 災害による被害を最小限に留めるためには、地震が来る前の屋根のリフォームがおすすめです。
実際に地震で被害に遭ってから直すよりも、時間も費用も大幅に削減することができます。 ご相談・お見積り無料ですので、お気軽にお問い合わせください!