1、はじめに
ご自宅の屋根の瓦の種類をご存じでしょうか? 実は、ご自宅の屋根が現在では製造されていない貴重な瓦の可能性があります。 定期的に屋根や瓦の状態を確認することが重要です。 特に築20年以上のお家は、しっかりと確認する必要があります。 今回は瓦の種類やメンテナンス方法について詳しくご説明します。
2、なぜ築20年以上のお家は確認が必要?
「モニエル瓦」という屋根瓦をご存じでしょうか? 様々なメリットを持つ瓦で、1970~1980年代にかけて特に高い人気を誇っていました。そのため、築20~50年ほどの戸建住宅で、屋根に瓦を使っているお家は、モニエル瓦を使っている可能性があるため確認が必要です。 なぜなら、モニエル瓦は現在では新品が手に入らない貴重な瓦だからです。 モニエル瓦は、日本モニエル株式会社が開発したセメント瓦で、正式には乾式コンクリート瓦と呼ばれています。 実は、日本モニエル株式会社は2010年に解散しており、今後は新しくモニエル瓦が製造される予定はありません。 つまり、何ヵ所か瓦が割れてしまったから交換しようと思っても、モニエル瓦は手に入りづらいということです。 そのため、ご自宅の屋根にどんな瓦が使われているか、1度確認しておくことをおすすめします。
モニエル瓦には、大きく分けて2つのメリットがあります。
① 耐震性
日本の瓦は主に粘土で作られるのに対して、モニエル瓦はセメントと砂で作られています。 そのため、従来の瓦に比べ軽量なので、地震の際に建物に与えるダメージが小さくなります。 一戸建て住宅の屋根の重量は、家屋の耐震性を考える場合に重要なポイントです。
② デザイン性
モニエル瓦の2つ目の特徴は、高いデザイン性を誇ることです。 モニエル瓦には、日本の瓦には存在しない着色スラリーと呼ばれる接着材の層が存在します。 着色スラリーが存在することで、発色の良い塗装が可能になります。 また、モニエル瓦自体が4種類あるため、色と合わせてオリジナリティの高いデザインが楽しめます。 例えば、S型は文字通りのSの字のように波打った形をしており、洋風の建物に使われています。 一方で、平型は板の形をしているため、和風や洋風を問わずどのような建物にもマッチしたデザインです。
モニエル瓦のデメリットは、メンテナンスの際の手間が挙げられます。 モニエル瓦のメンテナンスとは、主に経年劣化による再塗装です。 紫外線や雨によって劣化した塗装面を塗り直すことで、屋根を再び美しい状態に戻せます。 しかし、モニエル瓦を塗装するためには、1度スラリー層までしっかりと洗浄する必要があります。 劣化したスラリー層の上からいくら塗装を行っても、高い効果は期待できません。 古くなったスラリー層をしっかりと洗浄することで、新しい塗装がしっかりとモニエル瓦に付着します。 そのため、通常の塗装よりやや手間がかかるため、費用が高くなる点に注意してください。
3、モニエル瓦の見分け方
モニエル瓦には通常の瓦とは異なる点があるため、比較的容易に見分けられます。 外見上の大きな違いは、瓦の断面です。 通常の瓦は平らでツルツルしているのに対し、モニエル瓦かコンクリートと川砂が混じっているためザラザラした断面になっています。 また、モニエル瓦の裏面にはMのマークのロゴとモニエルという文字が刻印されています。 可能であれば、瓦をひっくり返してみることでモニエル瓦かどうか見分けられます。
4、モニエル瓦の劣化症状
モニエル瓦は、設置から10年ほどで劣化症状が現れます。 現時点でモニエル瓦が製造終了してから10年以上が経過しています。 そのため、現存するモニエル瓦でメンテナンスをしていないものは、劣化している可能性が高くなっています。 次に、モニエル瓦の代表的な劣化症状をご紹介します。
① 表面の退色やチョーキング
モニエル瓦の表面の色が薄くなってきたり、くすんできたりする劣化症状です。 日光や雨の影響でモニエル瓦の表面の着色スラリー層が劣化し、色が抜け始めている状態です。 また、表面に触れるとチョークのような粉が付くチョーキングも劣化の初期症状に挙げられます。 チョーキングも紫外線などの影響で塗装面が劣化しているころが原因です。 これらは劣化症状として最も軽度で、早めに対処することでモニエル瓦を今後も使い続けられます。 新築当時よりもお家全体の色がくすんできたら、劣化のサインです。
② ズレやひび割れ
モニエル瓦が何らかの影響でズレることも劣化症状に挙げられます。 ズレを放置すると、雨水が下地にまで染み込み、屋根の劣化や雨漏りの原因となることも。 また、モニエル瓦自体が割れてしまうこともあります。 原因は、飛来物やモニエル瓦自体の膨張と伸縮によるものが挙げられます。 その結果、より一層劣化が早まっていきます。
③ コケなどが生える
瓦自体にコケやカビが生えてくることも劣化症状の1つです。 主に家屋の北側の屋根に見られる症状です。 湿度が高い時期にコケなどの胞子がモニエル瓦に付着することで発芽し、繁殖していきます。 コケなどが繁殖することでモニエル瓦の主成分であるセメントが脆くなってしまいます。放っておいてもコケがなくなることはないので、広範囲に繁殖する前にメンテナンスを行いましょう。
③ 防水シートの劣化
屋根材の下に施工する防水シートも経年劣化が進みます。 防水シートの劣化に合わせて一部分や全部を張り替える必要があります。 モニエル瓦の劣化の進行に伴い、防水性が段階的に失われていきます。 そのため、住宅へ雨水が侵入していきます。 雨水が侵入すると建物の内側のセメントが劣化し、建物自体の劣化を早め、ご自宅の寿命を大幅に縮めてしまう可能性があります。 メンテナンスを早めに行うことでお家のメンテナンスのトータル出費を減らし、お住まいの劣化と損傷を最小限に食い止めるのがベストの選択と言えるでしょう。
5、モニエル瓦の屋根は葺き替えた方がよい?
モニエル瓦の寿命は20~30年ほどです。 そのため、場合によっては屋根の葺き替えを考える必要があります。 日本での生産が終了したのは2010年ですが、それ以前からモニエル瓦は使われていました。 特にお家の築年数が30年を超えている場合、新築の時に設置したモニエル瓦は寿命を迎えている可能性があります。 さらに、お家を新築してから1度も屋根のメンテナンスを行っていない場合は、早急に点検する必要があります。 葺き替えを行う場合は、平均して200万円ほどの費用が必要となります。 モニエル瓦から変更する屋根材によって費用は異なりますが、屋根の葺き替えは大きな出費に違いありません。 そのため、あらかじめご自宅の修繕計画を立てておき、費用を用意しておくことがおすすめです。 また、しっかりとメンテナンスを行うことで、ある程度は寿命を延ばせる可能性があります。 モニエル瓦の入手難易度は年々高くなっているため、劣化が進んでいない場合はすぐに葺き替える必要はありません。 ただし、モニエル瓦を葺き替えではなく塗装する際には、注意が必要です。 モニエル瓦の大きな特徴でもあるスラリー層ですが、古いものが残ったままでは新しい塗料が性能を発揮できません。 なぜなら、古いスラリー層が付いたまま塗装を行っても、新しい塗料が古いスラリー層と一緒に脱落するからです。 そのため、モニエル瓦を新しく塗装する際は、高圧洗浄で古いスラリー層を除去してもらいましょう。 さらに、高圧洗浄でもスラリー層が残ってしまった場合は、最終的には手作業で落とす必要があります。 また、モニエル瓦は瓦の中でも特殊なので、塗装に使用する塗料は慎重に選ぶ必要があります。 モニエル瓦に合わない塗料で塗装を行った場合、塗装不良を起こしたり劣化が早まったりすることもあります。 そのため、モニエル瓦の塗装を依頼する際は、必ずモニエル瓦の塗装実績がある塗料を使ってもらいましょう。 モニエル瓦に塗装実績のある塗料としては、「ヤネフレッシュSi」や「クールタイドF」がおすすめです。 モニエル瓦の塗装工事を行うことになると、平均的な屋根塗装工事よりも費用が高くなる可能性があります。 葺き替えがよいか塗装がよいかは、プロの専門業者に相談してみましょう。
6、まとめ
モニエル瓦は1970年代から2010年まで日本で屋根材として使用されており、今ある屋根の多くがメンテナンスを必要としています。 ご自宅にモニエル瓦が使われていても、正しいメンテナンスで長く受け継いでいくことが可能です。 スラリー層を除去して再塗装することで失われた防水性は回復させられますし、外観も美しく蘇ります。 お家を長くいい状態で保つためにも、早期のメンテナンスは必要です。 早期のメンテナンスを行うことでメンテンナスのトータル出費も抑えられるので、ご自宅がモニエル瓦を使った屋根の場合は、ぜひプロによる現地調査を受けてみてください。 今ある屋根を大事にすることが、環境にもお住まいにも家計にも優しい選択です。 こまめなメンテナンスでモニエル瓦を使った屋根を美しく保ちましょう。
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