1、はじめに
アスベストと言うと、多くの健康被害を出した危険な物質です。 ひと昔に大きな話題となったため、危険な物質として認識している方がほとんどだと思います。 そんなアスベストが、外壁や屋根などに使われている可能性があることをご存じでしょうか? もしあなたのお家にアスベストが使われているとしたら、健康面で被害がないか心配になってしまいますよね。今回は、一般的な住宅の外壁などにおいてアスベストがどんなに使われているかご紹介します。 合わせて必要となる対策もご紹介しますので、お家のリフォームを検討されている方はぜひ参考になさってください。
2、なぜ外壁塗装でアスベストが問題になる?
アスベストは、石綿とも言われる繊維状の鉱物です。 繊維1つ1つは非常に細く、粉砕された状態になると空気中を浮遊してしまいます。 非常に軽量で長期間空気中を浮遊するため、空気中に飛散してしまうと吸引することを避けるのは難しいです。吸引されたアスベストは、人体で消化されることがありません。 そのため、アスベストを長期間吸引すると肺の中にどんどん蓄積していってしまいます。 さらに肺に残った繊維上のアスベストは、肺の内側に刺さってしまいます。 刺さったアスベストは肺に悪影響を徐々に及ぼし、肺がんや中皮腫、石綿肺などを引き起こす危険性があるのです。 重大な健康被害を及ぼす恐れがあるため、現在では建材としての使用が全面的に禁止されています。
現在では使用が禁止されているため、身近にアスベストがあるなんて思ってもいない方がほとんどだと思います。 アスベストが大きな問題になったのは、大規模な建築現場や製造工場のため、一般的な住宅にアスベストが関係している理由がわからないかもしれません。 実は、アスベストはひと昔まで一般住宅にも使われる身近な建材でした。 アスベストには非常に緻密な繊維状の物質があるため、断熱性に優れるという特徴があります。 また、鉱物繊維であるため熱や酸などにも強く、非常に頑固な物質です。 さらに加工が簡単で安価なため、建築物の材料や断熱材として広く使われてきたのです。 断熱性を高めるため、外壁に使われるサイディングボードや屋根材である化粧スレートなどにアスベストが混ぜられていました。 原状としてこのような建材を使った住宅が、全て取り壊されているわけではありません。 少し前に建てられた建物は当時の建材が使用されているため、外壁の張り替えなどのメンテナンスを行う際にアスベストが問題となることがあるのです。
3、どんな住宅がアスベストが含まれている可能性がある?
現在販売されている塗料や外壁材には、アスベストが一切含まれていません。 そのため、最近建てられたお家に住んでいるのであればアスベストの心配をする必要は全くないでしょう。 アスベストが含まれている可能性のある建物は、ある程度築年数が経っている建物です。 具体的には、2006年以前に建てられた建物ならアスベストが含まれる建材が使われている可能性があります。なぜなら、2004年には一部を除いたアスベストの使用の禁止、2006年には全面的な使用の禁止が法律で定められたからです。 屋根材の化粧スレートや外壁材の窯業系サイディングは普及率の高い一般的な建材のため、2004年以前に建てられた建物なら高確率でアスベストが含まれていると言えます。 そのため、住宅を持つ多くの方がアスベストの対応を考えておく必要があると言えるでしょう。
4、外壁塗装はアスベストは気にしなくてもよい?
アスベストが健康被害をもたらすのは、吸引してしまった場合に限られます。 アスベストが健康被害をもたらすメカニズムは、吸引したアスベストが肺の内側に刺さり残留してしまうからです。 そのため、アスベストが粉砕されて空気中を浮遊するような状態にならなければ、健康被害を心配しなくても大丈夫です。 つまり、外壁塗装を行うだけならアスベストのことは考えなくてもよいということです。 塗装をするだけなら外壁を切断したり削ったりすることがないため、アスベストが飛散することがなく吸引する心配もありません。
5、外壁リフォームでアスベストが問題となる3つのケース
外壁塗装をするだけなら、サイディングにアスベストが含まれていてもほとんど問題になりません。 では、どのような時にサイディングに含まれたアスベストが問題になるのでしょうか? 外壁リフォームでアスベストが問題となるケースを3つご紹介します。
① 外壁の張り替えを行う場合
外壁の張り替えを行う場合は、サイディングをそのまま取り外すことは困難です。 どうしても切断するなどして壊しながら撤去する必要があります。 このときにサイディングに含まれるアスベストが外部に飛散してしまうので、外壁の張り替えを行う場合はアスベストが問題となります。 アスベストが含まれた外壁を撤去する場合は、法律にしたがって適切な作業を実施しなくてはなりません。 必要となる保護具や養生、人員、手間が普通のリフォームに比べ増大してしまうので、費用もその分高額になります。
② 劣化が激しい場合
通常、サイディングなどに含まれるアスベストはセメントや樹脂により固められているので粉塵となり飛散する心配はありません。 しかし、外壁の劣化があまりにも激しい場合には、アスベストが飛散してしまう恐れがあります。 外壁が劣化してくるとひび割れや傷が目立つようになり、そこから徐々にアスベストが飛散してしまうというわけです。 このような状態まで外壁が劣化してしまうと、周囲にアスベストを飛散させてしまう恐れがあります。 周辺に住む人の健康被害を害する恐れもあるため、劣化しすぎてしまう前に適切なメンテナンスを施すことが重要です。
③ 高圧洗浄には要注意
外壁塗装を行う際は、塗装前に高圧洗浄を行います。 高圧洗浄で使われる水圧は思っているよりも強力なので、外壁に傷をつけてしまうこともあるでしょう。 外壁が削れるなどしてしまえば、そこからアスベストが飛散する恐れがあります。 外壁塗装を実施する場合、高圧洗浄は不可欠な工程です。 洗浄が不十分であると、塗膜と外壁の密着性が悪くなり施工不良に発展してしまうのです。 そのため、高圧洗浄に耐えられないほど外壁が劣化している場合は、外壁塗装が実施できないケースも考えられます。 外壁塗装でメンテナンスができないなら、外壁そのものをリフォームしなければならなくなります。 このような事態にならないよう、外壁塗装のメンテナンスは適切な時期に実施しなければなりません
6、アスベストが含まれた外壁を撤去するには?
アスベストが含まれているからといって、いつまでも外壁を撤去しないというわけにはいきません。 サイディングもどんどん経年劣化するものなので、いずれは撤去しなければならない日が来るのです。 アスベストが含まれる建材を交換する際は、通常の建材と比べて以下のような手間がかかります。
① アスベストが含まれているか調査
2004年以前に建てられたお家であれば、アスベストが外壁などに含まれているか調査を実施しておいた方がよいでしょう。 アスベストの調査は、成分分析を行う専門の業者があります。 X線解析や顕微鏡検査により詳細に調査してもらえるので、心配なら一度依頼してみることをおすすめします。アスベスト調査には「建築物石綿含有建材調査者」という資格が必要なので、きちんと資格を持つ業者に依頼するようにしてください。 調査は撤去を検討しない段階でも、非常に役に立ちます。 もし、アスベストが含まれていると認識していなかったら、DIYで外壁に穴を開けるなどしてアスベストを飛散させてしまうことも考えられるのです。 このようなことにならないように、事前にアスベストのリスクを把握しておいてください。
② 飛散防止策が必要
サイディングの外壁を撤去する際には、どうしても粉塵が飛散してしまいます。 アスベストが含まれたサイディングを撤去するとなると、同時にアスベストが飛散してしまうことになるのです。 アスベストを自由に飛散させてしまうと、作業員や周辺住民の方に健康被害をもたらしかねません。 だからこそ、厳重な飛散防止策が必要になります。 アスベストが含まれる建材をリフォームする場合は、「石綿作業主任者」という資格を持った監督が必ず従事しなくてはなりません。 石綿作業主任者は、アスベストが周辺に飛散しないよう事前調査や作業計画書を作成します。 また、作業中も作業環境や保護具の利用などを監督する役割があります。 アスベストによる健康被害を防ぐためにも、飛散防止策と石綿作業主任者の選定は不可欠なのです。
③ 専用の廃材処理が必要
アスベストが含まれる建材は、専用の廃材処理が必要です。 もし、通常の廃棄物に紛れてしまえば、リサイクルに回されアスベストが拡散してしまうことも考えられます。このようなことを防ぐため、アスベストは管理型埋め立て処分場での最終処分が必要です。 また、運搬時や保管時にアスベストが飛散することを防ぐため、湿潤化した上で二重の梱包が必要です。 廃材を処理するだけでも普通の建材より手間と費用がかかるため、アスベストは非常に厄介な建材となっています。
7、外壁に含まれるアスベストの撤去費用を節約することはできる?
アスベストを撤去するには手間も費用もかかりますが、外壁を塗装や張り替えではなく「重ね張り」することでアスベストの撤去費用を節約することができます。 「重ね張り」とは、既存の外壁の上に新しい外壁を貼るメンテンス方法です。 外壁の撤去費用や廃棄物の処理費用がかからないため、張り替えよりも安く外壁を新しくできます。 お家の外壁にアスベストが含まれていた場合は、非常に安く外壁をリフォームすることが可能になります。 ただし、重ね張りをした外壁も合わせて、アスベストが含まれた外壁を撤去しなければならない日はいずれやってきます。 年月が経つことに処理費用などの高額になっていくので、問題を先送りにすることが必ずしも得策とは言えません。 住宅に含まれるアスベストの問題が広がるにつれ、自治体では補助金などの制度が設けられています。 補助金制度はお住まいの自治体によって異なるので、一度お住まいの自治体に相談してみるとよいでしょう。
8、まとめ
アスベストが含まれている外壁だからといって、今すぐに対策をしなければならないというわけではありません。 早目に外壁塗装を実施して劣化しないように注意すれば、外壁を長持ちさせて撤去するまでの日数をの延ばすことは十分可能なのです。 外壁の張り替えを行うのは、最終的に外壁がダメになった時で問題ありません。 「もしかしたら家の外壁や屋根にアスベストが含まれているかも…」と気になる方は、一度KARBECEにご相談ください。 KARBECEは自社でアスベストを分析することができます! 心配な方は、調査分析のみも可能です。 アスベスト分析採取の相談も受け付けております。 お気軽にお問い合わせください!