瓦屋根は地震に弱いのは本当?

1、はじめに

5月5日に能登地方を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生し、珠洲市で震度6強、能登町で震度5強、富山市でも震度3を観測しました。                                             住宅被害は珠洲市で全壊が少なくとも3棟、金沢市と輪島市でそれぞれ1棟が一部破損となっています。                                                            また、住宅関係の応急危険度判定では、これまでに421棟判定し危険が51棟、要注意が89棟、問題なしが281棟となっています。                                                    気象庁は今後1週間程度は同じ程度の揺れを伴う地震が起きる恐れがあるとして注意を呼び掛けています。

今回の能登地方の地震のニュースの中で、屋根瓦が壊れている映像が多く報道されていました。                    実際に地震による住宅の被害で多いのが、瓦屋根の倒壊です。                                    東日本大震災や熊本地震の際には、屋根にブルーシートがかかっている写真を目にした方も多いのではないでしょうか?                                                          震災の影響もあり耐久性に優れた瓦屋根が普及したものの、実施には被害が防ぎきれていないのが現状です。         今回は、瓦屋根の特徴や瓦屋根が地震に弱い理由、地震時に瓦屋根が被害を受ける被害の内容、また地震に強いとされる防災瓦などについてご説明します。                                        屋根のリフォーム工事を検討されている方や、お家の地震対策が不安な方はぜひ参考になさってください。

2、瓦屋根が地震に弱いと言われる理由

瓦屋根とは屋根材に瓦を使用しているもので、日本家屋に多く見られます。                           瓦には形や色、特徴が異なる和瓦と洋瓦があり、お家のタイプや好みによって使い分けが可能です。                瓦の原料には、主に粘土が使用されています。                                         粘土を成型して乾燥させ、高温で焼き上げる粘土瓦は耐久性に優れているため塗装の必要がありません。              種類は釉薬瓦(陶器瓦)、いぶし瓦、素焼き瓦、セメント瓦・コンクリート瓦など豊富にあります。                   瓦屋根は耐久性や断熱性、遮音性に優れており、寿命が長い点が特徴です。                              特に、日本瓦は定期的なメンテナンスを行うことで50年以上持つと言われています。                       ただし、他の屋根材と比べて価格が高く、地震や台風などの災害時に瓦が落ちるリスクがあります。

地震時に瓦が落ちている光景を目にしますが、地震時の住宅の倒壊にも瓦は関係しているのでしょうか?                 結論から言うと、屋根材の重さが家の耐震性に影響するのは事実です。                              屋根が軽ければ、その分建物の揺れも小さくなると考えられます。                                 ただし、瓦屋根だから倒壊するというわけではなく、また軽い屋根材だから倒壊しないというわけでもありません。                                                              耐久性の高い瓦屋根が地震に弱いと言われる大きな理由は屋根の重さではなく、建物そのものに関係しています。                                                                  住宅の耐震性能は、骨組みや構造が躯体の強さに直結しており、躯体が弱ければ軽い屋根材でも倒壊の危険性が十分にあります。                                                        つまり、重要なのは屋根材と重量と躯体のバランスであると言えるでしょう。

3、地震の影響を受けやすい2つの住宅箇所

実際に地震が発生した場合、瓦屋根はどのような被害を受けているのでしょうか?                         次に地震の影響を受けやすい住宅箇所をご紹介します。

① 瓦屋根の建物が半壊・全壊

地震時には、瓦屋根の建物被害が多く見られます。                                       建物が半壊、ひどい場合には全壊するものもあるほどです。                                      しかし、実際の主な原因は瓦屋根ではなく、建物の強度の問題です。                             独立行政法人防災科学研究所が行った実験では、築30年の耐震補強を施した住宅と施していない住宅に震度7レベルの揺れを与え、被害状況を比較しました。                                        その結果、無補強の住宅は激しく倒壊したのに対し、補強住宅は一部の壁が崩落するも倒壊しませんでした。              築年数が古い建物ほど半壊・全壊の危険性が高くなるものの、補強の有無で結果が大きく変わります。                前述の通り、屋根自体の重さが建物倒壊の直接の原因ではなく、屋根材の重さに見合った躯体の強度がないことが原因と言えます。                                                        壁や筋交いを増やすなど建物の強度を上げることで対策ができるため、地震による住宅被害を恐れて瓦屋根の使用を諦める必要はないでしょう。

② 瓦屋根の棟部

建物以外の地震による瓦屋根の被害は、大棟・隅棟・下り棟などの棟部に多く見られます。                     大棟とは屋根の頂点の部分で、隅棟は入母屋屋根や寄棟屋根で四隅角にある斜め部分、下り棟は入母屋屋根のまっすぐ降りている棟部分です。                                                    特に被害を受けた住宅の特徴としては、築30~40年ほどの古い建物や棟瓦や桟瓦を葺土のみで固定している旧工法(大回し工法)の建物などが挙げられます。                                              旧工法(大回し工法)とは、棟部分の冠瓦、のし瓦、葺き土を銅線でくるむ工法です。                          銅線を大きく回すため、大回し工法とも呼ばれています。                                      旧工法であるかどうかの確認は、棟部の外側に銅線が見えるか見えないかで判断できます。                    この工法が採用されている場合は、地震被害を防ぐ対策として耐震性の高いガイドライン工法へ葺き直しするのがおすすめです。

4、近年注目されている「防災瓦」の魅力

瓦屋根自体が地震に弱いわけではありませんが、建物の倒壊の可能性を少しでも減らせるのであれば対策すべきでしょう。                                                         そこで注目されるのが「防災瓦」です。                                           次に防災瓦が従来の瓦とどのように違うのか、その特徴や魅力、弱点などについてご説明します。

【防災瓦とは?】

防災瓦とは、一般的な瓦に比べて台風や地震などに強い瓦を指します。                              ロック式と呼ばれる工法で瓦同士を連結することにより、耐震性能が大幅に強化されているのが特徴です。             また、瓦を野地板(屋根の土台)に釘で固定させることで耐風性もアップするなど、まさに防災に役立つ瓦と言えます。                                                            従来の瓦は重量があり建物への負担も大きかったため、建物が老朽化した場合にはスレート屋根やガルバニウム鋼板などの軽量材に葺き替える必要がありました。                                         しかし、防災瓦は従来の粘土瓦のままで重量が約50%も軽量化されており、地震や強風に強く、耐震性・耐風性の高い瓦と言えます。                                                    防災瓦は、地震による瓦の被害が気になるという方におすすめです。

【防災瓦の魅力】

軽量化された防災瓦は、建物にかかる負担が軽量される点が魅力です。                              地震の揺れによる影響も少なく、災害時の心強い備えとなるでしょう。                              また、瓦の下部に爪がある構造が特徴で、爪を重ね合わせて瓦同士を固定しているため、ズレや落下がしにくくなっています。                                                           さらに瓦本来の耐久性は変わらず、他の屋根材では10~20年ほどで塗装や葺き替えの必要があるのに対し、30年以上メンテナンスの必要のないのも大きなメリットと言えるでしょう。                                その他、瓦同士がしっかり重なっているため雨水の侵入を防ぎ、防水性の高い構造になっているだけでなく、音や熱を吸収する性質もあり、遮音性・遮熱性が高い点も魅力です。

【防災瓦の弱点】

メリットの多い防災瓦ですが、スレート屋根や金属屋根などに比べて価格が高い上、工法が特殊で手間がかかるため施工費用も高い傾向にあります。                                               ただし、防災瓦は30年ほどメンテナンスフリーなので、維持費を考えるとコストを抑えられるでしょう。                 また、ズレや落下がしにくいとはいえ、強い衝撃を受けると従来の瓦同様に割れる可能性はあります。                  さらに従来の瓦屋根よりも軽量化されているものの、金属・スレート屋根などの軽い屋根材と比べると重さがあるため、これらの素材に比べて建物への負荷を軽減できるとは言い切れません。                             しかし、現在の耐震基準に則った建物であれば、瓦の重さがあっても耐震性能に問題はないとされています。               これらの弱点を考慮した上で、防災瓦を取り入れるか判断するとよいでしょう。

5、まとめ

今までは屋根瓦と言えば「地震に弱い」と言われてきました。                                 明治から昭和初期まで土葺きという工法で地震の被害が大きかったため、そのイメージが定着したのでしょう。しかし、度重なる地震災害を経て古くから私達が馴染んできた瓦やその工法も改良されてきています。               そのため防災瓦のような地震に強い瓦が家屋に使われるようになり、注目されています。                       また、屋根瓦の耐久性は50年以上とも言われています。                                  お家の構造や立地条件さえしっかりしていれば、瓦屋根はお家そのものの耐久性につながると言えるでしょう。古くから使われてきた日本瓦のメリットを知って、地震に強い家作りをしましょう。

しばらくは地震が発生する可能性があるので、今一度お家の屋根や外壁に異常がいないか確認しましょう。

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