1、はじめに
春の訪れを知らせる春一番。 暖かな春風を運ぶというイメージがありますが、別名「春の嵐」と呼ばれるほど日本列島に強い風を吹かせ、多くの被害をもたらします。 今回は春一番が訪れた場合、どのような場所に被害が発生しやすいのか、被害遭遇時のおすすめ対策法などわかりやすく解説します。
2、春一番とは?
春一番とは、例年2月~3月中旬に吹く強く暖かい南寄りの風のことです。 富山県でも例年2月中旬に春一番が観測されています。 秒測8m以上にもなる春一番は、時には台風並みの強風になる場合もあるためあなどれません。 春一番が観測されると、気温が上昇し、特に沿岸部では強風被害が発生しがちです。 台風などはあらかじめ窓に対策を施す方も多いと思いますが、春一番などの季節風の場合は何も対策をしていない事が多いので、被害が大きくなるリスクもあるのです。
3、強風被害で被害に遭いやすい6箇所
春一番による強風被害が生じやすい箇所は、以下の6つです。 被害に遭いやすい箇所の詳細と有効な対策法をご説明します。
① 屋根材
強風による住宅被害の代表例が屋根材の飛散です。 特に瓦屋根は、重量であることから強風には強いと思われているのですが、実際はそうではありません。 もともと瓦屋根は風を含みやすい構造となっているため、小さな屋根の歪みなどがあるだけで一気に屋根材が捲れてしまう被害が発生します。 スレートや金属屋根は、瓦よりも風に強いのですが、メンテナンスを怠り、何らかの不具合が発生していた際、強風がとどめとなり、屋根材が飛散してしまう危険性があります。
② 棟板金
スレートや金属屋根の頂上部分に取り付けられる棟板金は、春一番の強風被害を受けやすい箇所です。 棟板金をかぶせなければ、雨漏りや住宅パーツの劣化、強風時に異音がする等の被害が生じます。 この部分は、釘やコーキングなどで固定されているのですが、経年劣化で徐々に固定力が緩んで板金が浮いてしまうこともあるのです。 そこに強風が吹いた場合、一気に棟板金が捲れてしまう被害が出るのです。 ちなみに瓦屋根には棟瓦が積まれているのですが、この部分も強風で崩れてしまう危険があります。 棟板金は貫板という木材で固定されており、このパーツが雨水で劣化すると急速に耐性が低くなります。
③ 波板
春一番や台風によって起きる強風は、下から上に向かって巻き上げるように吹き上げます。 そのためカーポートやベランダ屋根に使用されている波板は、強風に耐えることができず、飛ばされたり割れたりする等の被害が生じます。 波板への強風被害を少しでも軽減したければ、固定具の数を増やす対策が効果的です。 また塩ビ波板やガラスネット入り塩ビなど、素材によって価格や耐久性が異なるため、お住まいの環境に応じて選ぶことをおすすめします。
④ 門扉
門扉は、春一番が吹くと強風にあおられて故障してしまうことがあります。 例えば、アコーディオンと呼ばれる伸縮タイプの門扉は、風にあおられることで広がり、変形したり倒れることもあります。 強風の被害によって破損すれば、2度とアコーディオンのように折りたたむことができなくなります。 そのため強風による被害を避けるためには、アコーディオンゲートの伸縮部分を折りたたんでおくことをおすすめします。 紐で柱に固定しておくことで、門扉の伸縮を確実に防ぐことができます。 他にもしっかりと扉を閉めて施錠していれば、強風にあおられても門扉を破損する確率を下げることができます。
⑤ 軒天
軒天とは住宅の屋根外側部分の天井のことで、軒裏天井と呼ばれる部分です。 強風吹くと軒天が剥がれてしまうため、屋根が劣化しやすくなります。 15年ほど前は材木の素材が用いられていましたが、現在は不燃系の素材が利用されています。 仮に軒天に少し被害が出たとしても、不燃材をかぶせたり、素材を張り替えることで十分に対策できます。
⑥ 外壁
春一番が吹くと、飛来物によって外壁を大きく損傷してしますことがあります。 特に外壁のコーナー部分は、損傷痕が残りやすく、修繕が必要になるケースが多いです。 また、既存の外壁のひび割れが強雨被害によって大きくなることもあります。 そのため、ひび割れが目立ってきたら事前にクラック補修や塗装メンテナンス等の対策をしておくことをおすすめします。
4、強風への対策とは?
瓦屋根への強風対策には、瓦同士の隙間をコーティング材で埋めてズレを防止するラバー工法がよく採用されています。 ただし瓦自体がすでに傷んでいる状況であれば、スレートやガルバニウム屋根、防災瓦への葺き替えの方が効果的です。
瓦屋根に比べると、スレート屋根やガルバニウム銅板などの金属屋根は強風に強い素材だと言えるでしょう。 スレート屋根の場合、メーカーによっては秒速60mにも耐えられるものも発売されています。 ただし、スレート屋根は瓦屋根に比べて衝撃に弱い素材で、飛来物によるダメージには注意が必要です。
また強風は自宅にあるものを吹き飛ばすだけでなく、隣家などから何かが飛ばされるという危険性もあります。例えば隣家の瓦が飛ばされてきた場合、外壁や屋根材にぶつかり、穴をあけてしまうという被害も少なくありません。 他にも、窓ガラスが割れて怪我をしてしまうという事例もあります。
5、まとめ
日本は諸外国とは異なり、四季があるのが特徴で、毎年その季節ごとに様々な自然現象が起こります。 建物はそういった自然現象から私たちを守ってくれるものですが、忘れてはいけないのが「自然現象によるダメージは年々蓄積している」ということです。 屋根や外壁は、常に雨風などの外的要因にさらされ続けている部分なので、強風が吹いていない時でも少しずつ劣化が進んでいることも考えられます。 外壁であれば、まだ目につく場所なので日常生活の中で劣化状況を確認することもできますが、屋根の劣化にはなかなか気づくことができません。 そこに春一番のような強風があった場合、突然大きな被害へと発展してしまうのです。
しかし、ほとんどの場合は経年劣化が強風により表面化することが多く、日々の点検・メンテナンスを怠らなければ防げるものなのです。
「備えあれば憂いなし」
大きな修理が必要になる前に、屋根の点検・メンテナンスをご検討ください。