1、はじめに
富山県では、今年の冬も大雪予想の冬を迎えることとなりました。 立春が過ぎ、冬の峠を越えたと感じさせるような温かい日も少しずつ増えてきました。 昨年の冬は記録的大雪による雪害が多く発生し、雪による住宅被害に関心を寄せる方も増えているようです。 降雪がひと段落した今、雪害が起きているかを確認する重要な時期でもあります。 今回は雪害被害が発生しやすい箇所や対処法・予防法について徹底解説します。
2、雪による住宅被害の実例
まずは、今までに報告されている雪による住宅被害についてご紹介します。 住宅のどのような場所に多く雪害被害が発生しているのでしょうか?
① 雨樋の歪み
雪の重さに耐えきれず、雨樋がゆがんでしまうことがあります。 雪による被害の中で、最も多い被害がこの雨樋のゆがみです。
② 屋根瓦の損害
雪の重みで屋根に圧がかかり、軒先がゆがんだり、2階からの落雪により1階の屋根瓦が損傷したりすることがあります。
③ カーポートの損害
カーポートの上に積もった雪の重みや、屋根から落ちた雪で倒壊することがあります。
④ 雨漏り
屋根の谷のように低くなっている部分などには雪が溜まりやすく、雪解け水の影響で雨漏りが発生することがあります。
⑤ アンテナの被害
アンテナは屋根にあるため雪などの影響を受けやすく、積雪によって重さに耐えきれずに倒れたり壊れてしまうことがあります。
雨樋は目視で簡単に点検することができますが、屋根は高所での作業も難しく、目視では被害を見つけることができない部分です。 雪が解けるタイミングで、知識と経験が豊富な専門業者に点検やメンテナンスを依頼することをおすすめします。
3、外壁の雪害被害「凍害」とは?
実は、外壁にも雪害は起きてしまうのです。
外壁の塗装面の防水機能が弱まると、外壁材は水分を吸い込むようになります。 積雪がある年末から2月頃、外壁材の中に吸い込んだ水分は、気温が0℃を下回ると外壁の中で氷の粒へと変わります。 外壁材の中の水は、外壁材を内側から壊し、体積を増やして氷になります。 そして気温が上がるとまた水へと戻ります。 体積が増えて外壁が壊れた部分は空洞になり、そこにさらに水が溜まります。 増えた水は、再びもっと大きな氷へと状態変化をするためさらに外壁を内側から壊していくのです。
このような現象を「凍害」と言います。 凍害が起きると、外壁材は塗膜が捲れて、外壁の素地が見えてきてしまうケースが多く発生するのです。 外壁の凍害は、最後に外壁の表面部分に出てきます。 つまり、一般的には表面に被害が出てしまってからしか被害を確認することができないのです。 被害を確認した時にはすでに劣化は進行しており、雨漏りがあったり外壁が明らかに損傷しているケースがほとんどです。 1階の屋根の端が2階の壁とくっついている作りの住宅や、内外気温差で湿気のたまりやすいお風呂場やキッチン等の水回りの外壁、日当たりの悪い北面の外壁等は、このような被害を受けやすいと言われています。 また、外壁材と外壁材の継ぎ目の隙間はコーキングで埋められており、経年劣化が早く起きる部分です。 もともとコーキングの劣化で発生していたひび割れに、雪解け水が絶えず浸み込むことにより、そこから塗膜剥がれや内部劣化を起こす事もあります。
また、雪の圧により外壁が凹んでしまう事例も報告されています。 積もった雪が外壁を押すことによって凹みができてしまいます。 特に金属サイディングは凹んでしまう可能性が高いです。
4、凍害被害の放置はNG!
凍害は進行とともに劣化状況が深刻になっていきます。 凍害による劣化症状を放置するとどんな問題があるのでしょうか? ただ単に「見た目が悪くなる」という問題だけではありません。 劣化した箇所から水分が建物に侵入してしまうため、建物の構造体が腐食し、内部に雨漏れが発生する可能性もあります。 そのような状態になると、場合によっては外壁の改修工事だけでなく、建物内部の補修工事が必要になることもあり、大規模な補修工事を行う必要が出てきます。 その分、塗装工事などと比較すると高額な改修費用が必要になってしまいます。 早目の対策をとることで工事の費用を抑えることができ、さらには建物の外観や内部構造を守ることにも繋がるのです。
5、凍害が発生した場合の対処方法
凍害が生じた際には、次の4つの手段によって対処するのが一般的です。 凍害の進行レベルによって、どの対策をするのか変わってきます。
① 新しい外壁材に張り替える
凍害が発生した際に有効な対処法は、新しい外壁材に張り替えるという方法が良いでしょう。 新しい外壁材に変えることで新しい綺麗な見た目になるだけではなく、建物の防水性や耐候性が格段に向上し、凍害のリスクを減らすことができるというメリットがあります。 しかし、他の対処方法に比べて高額な工事費用が必要となるというデメリットもあります。
② 塗り替える
塗り替えは、既存の外壁の上に新しく塗料を塗る工事です。 コンクリートの表面部分が、コンクリート内部の膨張圧により部分的に飛び出すように剥がれてくる現象(ポップアウト)、微細ひび割れ、コンクリートの内部で水分が凍結と融解を繰り返しセメントベースと剥離している(スケーリング)外壁におすすめです。 劣化している箇所にパテを使って補修し、外壁表面をなめらかに整えた後にその補修した上から塗料を塗り替えます。 劣化箇所が大きい、または劣化の数が多いという家におすすめの工事です。 価格はおよそ80~150万円程が相場と言われています(使用する塗料のグレードによって費用は異なります)。塗り替えすることで劣化して弱くなっていた防水性能や紫外線に対しての耐候性を再び向上させることができ、凍害の発生を抑制することができます。 また、一般的に塗り替えに使用されるシリコン塗料は、耐用年数が約10年のものが多いため、約10年はメンテナンスがいらないというメリットもあります。
③ パテを使って部分補修する
パテとはペースト状の充填材のことです。 傷の隠蔽や水漏れの防止などに使用されます。 ポップアウトや小さなひび割れなど、凍害の初期に発生する劣化症状が見られる場合で、そこまで目立つような傷になっていない場合は、パテを使っての部分補修が可能です。 価格は20~40万円が相場と言われています(補修する箇所によって費用は異なります)。 安価で工事を行うことができること、ホームセンターなどで購入すれば自分でも手軽に工事できるというメリットがあります。 しかし、パテは短い年数で劣化してしまうため、パテが剥がれた箇所は凍害がさらに進行してしまう危険性もあり、あまりおすすめできる対処法ではありません。 パテを使っての補修工事は、あくまで応急処置であるということを覚えておきましょう。
④ 窓・サッシ・目地にはシーリング材を打設する
窓枠やサッシの部分、さらには外壁のシーリング部分からも湿気が侵入しやすいということは先程もお伝えいたしました。 そこで、排気口や窓側、サッシ、外壁の目地部の周辺に凍害の劣化症状が確認された場合、凍害が発生している箇所の補修工事とともに、シーリング材を打設し、住宅の隙間と全体的に埋める工事を行うようにしましょう。価格はおよそ25~50万円が相場です(シーリング材を打設する箇所の目地の長さにより金額は異なります)。
6、凍害を進行させないための予防方
凍害被害を進行させないための予防方法を2つご紹介いたします。
① 窓サッシや換気フードに水切りを付ける
窓まわり・サッシ・換気フードは湿気が溜まりやすく、凍害が発生しやすい箇所です。 そこでそのような箇所に水切りを付けることをおすすめします。 この水切りを使用することで凍害防止になるだけではなく、伝い水による雨筋汚れも抑制できるため「汚れをつけたくない」という方にもおすすめです。
② 定期的に自分でお家まわりをチェックする
凍害は徐々に進行していきますが、早期発見することで改修工事の規模とそれに伴う工事費用を小さく抑えることができます。 そこで自分自身で年1回~2回くらいは水回りやコンクリートの部分をチェックしてみましょう。
【お家点検項目】
● 外壁を1周回って、ひび割れや崩落がないか確認する。 ● サイディング外壁の目地部に打設されているコーキングが劣化していないか確認する。 ● 窓まわり、サッシ、換気フードの周辺に劣化がないか確認する ● リビング、お風呂などに面している外壁に劣化症状がないか確認する
そして少しでも劣化症状が確認されたら、知識と経験が豊富な専門業者に依頼して点検してもらいましょう。
7、まとめ
降雪がひと段落したこの時期、外壁の状態を見ることは雪害被害を最小限に抑えるためにもとても重要です。 そして凍害は1度症状が出ると進行が早く、大規模修繕になることが多いです。 見つけたらすぐに対処し、発生しないように予防することが大切です。 凍害はサイディングを使用している住宅に重大なダメージを与えるものです。
外壁塗装に最適と言われている春を迎える前に、お家の外壁を確認してみましょう。 来年も安心して大雪を迎えられるように、外壁の点検・メンテナンスをご検討ください。