1、はじめに
新築時は美しい外壁も、雨風や紫外線の影響を受け続けることで、年月が経つにつれて汚れが付着します。 外壁汚れは外観を損なうほか、雨漏りやカビなどのトラブルも招くのです。 さらに汚れを放置すると建物内部が腐食する危険もあるため、早めの対処が必要です。 今回は、外壁汚れの正体とその解消方法について紹介します。 建物のイメージを決める外壁は、常にきれいにしておきたいものです。 外壁掃除の必要性や掃除方法についてしっかり確認し、外壁についての意識を高めましょう。
2、外壁汚れの正体
外壁が汚れる原因は、大きく5パターンに分かれます。 詳しく見ていきましょう。
【都市型汚れ】
外壁ボードの継ぎ目やサッシ周りに施されたシーリング部分には、油分が含まれています。 油分は年月が経つにつれて少しずつ溶け出し、排気口から排出されるススやホコリ、大気汚染物質などと混ざり頑固な汚れになるのです。 この堆積した汚れを「都市型汚れ」といい、窓や排気口、外壁の軒下などに黒ずみとして現れます。 油分が混じった汚れであるため、雨水では流れません。
【雨だれ汚れ】
雨だれ汚れは、雨水が排出される通り道となる場所に、雨水とホコリなどが一緒に流れて外壁に付着する黒い汚れのことです。 近年、汚れにくさを重視して水を弾く作用のある疎水性の高い外壁塗料を使用している建物が多く見られますが、安心してはいけません。 疎水性が高い塗膜の場合は水を弾きますが、雨水に含まれる大気中の油汚れは外壁に吸着する性質があるのです。
【コケ・藻・カビ】
日当たりが悪く、湿気の多い環境に立地する建物は、コケや藻、カビに注意しましょう。 菌や胞子は汚れを栄養にして繁殖するため、外壁掃除を怠っているとコケや藻、カビがどんどん増えてしまいます。 また、外壁の種類によっても汚れのつきやすさは変わります。 コケや藻、カビが発生しやすいのは、主にモルタル壁、リシン壁、ALC壁、窯業系サイディングです。
【塗料の寿命による汚れ】
外壁に塗られた塗料は、見た目を美しくする以外に建物を保護する重要な役割を担っています。 塗膜が雨水や汚れから建物を守っているのです。 塗膜が劣化すると防水機能などが損なわれ、外壁に汚れがつきやすくなります。 塗料の寿命は種類によって異なり、3年程度のものから15年持つものまで様々です。 また、住まいの立地条件により、塗膜の耐久性も変わります。 周りに自然が多い場合や日当たりが悪い場合は、カビやホコリなどの汚れが付着しやすいです。 立地条件に応じて塗料の寿命を見極めましょう。
【鳥・コウモリのフン】
鳥やコウモリが落とすフンも、外壁を汚す原因の1つです。 外壁だけでなく、屋根やベランダ、手すりなど、どの場所にも付着する恐れのある汚れです。 家にハトやコウモリなどが住み着いてしまった場合は、被害が大きくなります。 鳥のフンは強い酸性で、塗膜を溶かす尿酸や健康を害する菌が含まれている可能性があります。 コウモリのフンには寄生虫が含まれており、病原体の温床にもなります。 呼吸の際に空気中に舞い上がった菌を吸い込むと、健康被害が起こる可能性もあるのです。 鳥のフンが付着した場合は、すぐに掃除して落としてしまいましょう。 掃除の際は、必ずマスクをゴム手袋を着用してください。
3、汚れを放置すると・・・
汚れを放置することで、劣化はより深刻になっていきます。 汚れを放置するほど補修費用もかさんでしまうため、定期的に掃除することが大切です。 外壁の汚れを放置しているとどのような劣化が起こるのか、詳しくみていきましょう。
【美観が損なわれ、汚れが落ちにくくなる】
雨風や紫外線の影響を受け続ける外壁は、年月が経つにつれて次第に汚れが付着します。 外壁に汚れが付くと、当然家の見た目も悪くなります。 また、汚れは蓄積するほど落ちにくく頑固な汚れになるのです。
【防水効果が低下する】
外壁は表面に塗られた塗料により、耐久性を高めていきます。 しかし、外壁に汚れが付くと塗料の保護機能が発揮できません。 また、塗膜が剥がれることで外壁の耐久性が弱まります。 外壁の防水効果も弱まるため、雨水や紫外線の影響を受けやすくなるのです。
【外壁が劣化する】
外壁は、雨水や紫外線の影響を日々受け続けます。 耐久性が落ちた外壁には、劣化が起こります。 壁を触ると手に白い粉が付くチョーキング、カビやコケ、藻が生えるなど、様々な劣化が現れるのです。
【外壁の劣化が早くなる】
劣化した外壁は、耐久性が落ちているためさらに劣化が早まります。 雨水や紫外線の影響を受けやすく、湿気がこもりやすい状態になり、雨漏りやクラックといわれるひび割れなどの深刻な劣化も起こります。 また、雨漏りが発生することで住まいがジメジメとするため、シロアリ被害やカビなどによってシックハウス症候群などの健康被害を引き起こす可能性もあるのです。
【建物内部まで腐食する】
家を保護する外壁の耐久性が落ちると、建物内部まで腐食が進み深刻な事態を招きます。 建物を支える柱や梁などまで腐食が進行すると、最悪の場合は倒壊の危機にまで発展する恐れがあるのです。
4、掃除を始める前に確認すべきこと
掃除を始める前に、まず自宅の外壁材を確認しましょう。 外壁材によっては、自分で掃除すると傷める恐れのある素材があるためです。 例えば、リシン仕上げやスタッコ仕上げなどのモルタル外壁は、表面に凹凸があるため汚れが付着しやすい性質があります。 しかも、家庭用の高圧洗浄機の威力ではきれいに汚れが落ちないだけでなく、水圧により外壁材が破損する恐れがあります。 漆喰の外壁は洗浄を行うと、漆喰が大量に剥がれ落ちてしまうのです。 モルタル外壁や漆喰の外壁は、洗浄と塗装を合わせて行う必要があるため、業者を頼る方がよいでしょう。 タイルの外壁は、洗浄時にタイルが浮いたり剥がれたりする可能性があります。 タイルの外壁も業者に依頼した方がよいでしょう。 自宅の外壁材の掃除方法について知識がない場合は、業者に頼る方がオススメです。
5、外壁の掃除方法
現在、外壁の主流として使われているサイディング外壁の掃除方法を具体的にご紹介します。
【外壁掃除の頻度】
外壁掃除の頻度は、年に1~2回が目安です。 掃除の際は、外壁に劣化が起きていないか点検しながら掃除するとよいでしょう。
【必要なもの】
・ 洗車用のスポンジ ・ 雑巾 ・ 中性洗剤
【サイディング外壁の掃除方法】
① 水洗いする まず、ホースや高圧洗浄機などで外壁全体を水洗いします。 水は上から下に流れるため、上の方からゆっくり洗っていきましょう。 業者は高圧洗浄機を使って洗浄しますが、窓周りやコーキング部分、劣化した外壁を高圧洗浄すると、室内へ水が侵入するケースもあります。 洗浄の際は、水圧に注意しながら必要に応じて窓周りなどを養生して洗浄しましょう。
② 中性洗剤で汚れを落とす 中性洗剤とスポンジを使用し、水洗いできなかった汚れを落とします。 中性洗剤はぬるま湯で10~20倍ほどに薄めてください。 コケやカビが見られる場合は、カビ取り剤をスプレーしましょう。
③ 水で洗い流す 水で中性洗剤を洗い流します。 このとき、コーティング部分には直接水を当てず、雑巾で優しくふき取るようにしてください。 コーキング部分が傷つくと、建物内部に水が侵入してしまいます。 中性洗剤の洗い残しは劣化の原因となるため、しっかり洗い流しましょう。
④ 乾燥させる 自然乾燥させ、作業完了です。
【窓周りにあるサッシの掃除方法】
窓周りのサッシのお手入れ方法は、次の通りです。
① 汚れを取り除く サッシやレールの表面についた土埃や砂を掃除機やほうき、使い古しの歯ブラシを使って取り除きます。 サッシに付いた汚れは、水に濡れると落ちづらくなるので、乾燥した状態で取り除きましょう。
② 汚れを拭き取る 水に濡らした雑巾で全体を水拭きします。 汚れがひどい場合は、中性洗剤をぬるま湯で10~20倍ほどに薄めた液を雑巾にふくませ、汚れを拭き取ります。
③ 仕上げの水拭き、乾燥 最後に固く絞った雑巾で水拭きします。 自然乾燥させたら完了です。
6、外壁を掃除する際の注意点
外壁掃除に取り掛かる前に、下記の注意点を確認しておきましょう。
① 晴れの日に掃除する 天気の悪い日に掃除すると、十分な乾燥ができないこともあり、またすぐに汚れてしまいます。
② 上から下に洗う 洗浄水にはホコリなどの外壁に付着した汚れが混ざり、真っ黒な水が流れ落ちます。 洗浄の際には、上から下に向かって洗い流しましょう。
③ コーキング部分は慎重に掃除する コーキング部分は水圧に弱く、すぐに傷ついたり隙間ができたりします。 高圧洗浄機を使って掃除した結果、コーティングが破損したり、室内に水が侵入して水浸しになったりすることもあるのです。 コーティング部分には直接水をかけず、雑巾で優しくふき取ることを心がけましょう。
④ 研磨剤は使わない 研磨剤は汚れと一緒に外壁の素材まで削ります。 頑固な汚れがあっても、研磨剤は使わないようにしましょう。
⑤ 室内への水漏れに気をつける 外壁に水をかける際、室内に水が侵入しないよう注意しましょう。 換気扇やサッシの隙間などは、養生テープでふさいでおくと安心です。
⑥ 近隣の方に迷惑をかけないように注意する ホースなどで水をかける際は、近隣に飛び散らないよう十分注意してください。 掃除の際の騒音にも気をつけましょう。 また、漂白剤を使うと隣家の盆栽やペットへ悪影響が及ぶ可能性もあるので注意が必要です。 トラブルを防ぐためにも、掃除前に近隣の方には声をかけておいたほうがよいでしょう。
⑦ 汚れてもよい服装で掃除する 外壁掃除をしていると、汚れや水が跳ね返ってきます。 服装は汚れてもよいものを選びましょう。
⑧ ブラシは柔らかいものを使う 外壁掃除には柔らかいブラシを用います。 外壁材を傷める恐れがあるので、強い力やたわしでゴシゴシ擦ることはやめましょう。
⑨ マスクとゴム手袋を着用する 中性洗剤やカビ取り用の洗剤などを使う時は、手荒れを起こす可能性があります。 また、外壁に生えているカビは、吸い込むとアレルギーを起こす可能性があります。 掃除の際はゴム手袋を着用し、必要に応じてゴーグルも装着しましょう。
⑩ 高所作業での転落の可能性 2階などの高所では、はしごや脚立を利用して作業することになります。 しかし、手が届かない場所は無理をして行わない方が賢明です。 はしごから転落して大怪我をする恐れがあります。 万が一高所で掃除する場合は、一人で作業を行わないようにし、足場を作る、落下防止のための紐をつけるなど、万全の対策をしましょう。 安全第一に作業を行い、決して無理をしないことが重要です。
⑪ 外壁掃除は業者に依頼する方がオススメ 外壁掃除を自分でするには、道具を揃える必要があり、その道具を収納する場所も必要となります。 せっかく家庭用高圧洗浄機を購入しても、業者の使う高圧洗浄機に比べて威力が弱いため、外壁に付いた汚れはなかなかきれいに落ちません。 単純のように見えて、外壁掃除には外壁材に関する知識が必要です。 コストを抑えたいからと安易な気持ちで外壁掃除をした結果、外壁材を傷めてしまったり、家の中が水浸しになったりするなど、かえってトータルコストがかさんでしまう可能性もあります。 そして何よりも、外壁掃除は高所から転落する危険性のある作業です。 安全面から考えても、外壁掃除は業者を頼る方がオススメです。
7、塗り替えのサイン
下記の劣化が見られる場合は、掃除ではなく外壁の塗り替えが必要です。
・ 10年以上再塗装していない ・ ひび割れやサビが見られる ・ 塗料の剥がれが見られる ・ コーキングがひび割れている ・ 外壁に触れたとき手に粉が付く ・ 変色や色あせが見られる ・ 塗装に膨れが見られる
8、まとめ
外壁の汚れを放置すると、美観が損なわれるだけでなく、さまざまなトラブルが起こります。 最悪の場合は、建物内部まで腐食が進んで倒壊などの深刻な問題につながるのです。 汚れが落ちやすいうちに、定期的に掃除することが大切です。 しかし、外壁掃除は外壁材によって自分でできない場合もあります。 自分で掃除したことで外壁材を傷め、より劣化が進行してしまうこともあるのです。 また、高所から落下するおそれもあります。 外壁掃除は業者に依頼する方がオススメです。